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ダイハツ、短期開発の重圧 現場任せ、根本的出直し不可避 エアバッグの電子制御装置など巡る不正

» 2023年12月21日 10時34分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 ダイハツ工業の不正の調査を行った第三者委員会は12月20日、不正の真因について「自分や自工程さえよければよく、他人がどうであってもかまわない」という自己中心的な風潮が開発部門にあり、それが全社的な社風として深く根付いている可能性があると指摘した。会見した貝阿彌誠委員長は、対策を講じずに現場任せにした経営にこそ重大な責任があるとの認識を示しており、人命を乗せる自動車メーカーとしてダイハツは根本的な出直しを迫られる。経営トップを送り込んできた親会社のトヨタ自動車も重い課題を突き付けられた。

 第三者委は、不正の直接的な要因に商品開発の「過度にタイトで硬直的なスケジュールによる極度のプレッシャー」を挙げた。

 調査で新たに発覚した衝突試験の不正は本来、エアバッグの作動に使う電子制御装置の開発が間に合わず、タイマーで作動させていた。開発日程を守るため、正規の手順を無視した典型で、ダイハツが他社との差別化の強みと認識する短期開発が不正という致命的な弊害を生んでいた。

 調査報告書によると、2011年9月に大幅に開発期間を短縮して市場投入した「ミラ イース」のヒットの成功体験が短期開発を助長。16年にトヨタが完全子会社化し、トヨタの海外生産プロジェクトを担うことになったことで同社の期待に応えることが最重要課題になったことも短期開発を促進した。このため、第三者委が認定した174個の不正は14年以降に件数が増えていた。

photo 衝突試験の不正で国内外で販売している全車種の出荷を停止したことを受け会見を行うダイハツ工業の奥平総一郎社長=20日午後、東京都文京区(関勝行撮影)

 一方で、第三者委の一人は、ダイハツでは、トヨタが車づくりの基本とする「現地現物がなされていなかった」と厳しく指摘した。トヨタが事業連携を強めた半面、肝心の車づくりではトヨタ流が全く浸透していなかったことになる。

 管理職が現場の状況に精通しておらず、経営幹部のリスクへの感度が低く、職場環境が「ブラックボックス化」したことで、長年にわたって短期開発の弊害に気づかず、社内で不正を防ぐ自浄作用も働かなかった。

 第三者委も、ダイハツの奥平総一郎社長も、まずは外部の特別な監視機関の設置が経営改革の一歩としたが、不正の温床となった企業文化を変えるのは至難の業だ。(池田昇)

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