国内通信大手のKDDIでは、コミュニケーションツール「Microsoft Teams」上に自社開発したAIチャットを導入しており、社員1万人が日々利用している。このAIチャットは「KDDI AI-Chat for Teams」と呼ばれ、2023年8月に業務へと導入。社員が企画のアイデア出しや制作業務支援、文書作成支援などの業務効率改善・AIスキル向上に使えるようにしていた。
以前はWebブラウザ上でのみ提供していたが、毎日使うツールであるTeamsで使えるようにさせることで、さらなる利用促進を狙ったという。その導入を支援したのがKDDIグループでアジャイル開発事業を行うKDDIアジャイル開発センター(東京都港区、以下KAG)だ。
KAGは「Web版はブラウザを立ち上げてあらかじめブックマークしておいたURLをブックマークしてアクセスする、という動線がやや利用のハードルとなる側面もあった。Teamsなら毎日使うツール上でAIを呼び出せて、スマホからもさっと使えたり、同僚のいるグループチャット内でAIを混ぜて一緒に質問できるなどの日常的な利便性のメリットを狙った」と語る。
Teamsへの導入後、先述したChatGPTに近いユースケースの他にも、システム系の部署では「コード生成やデータの簡単な加工などでも便利だ」というフィードバックもあった。また、Teamsの普及度が高いことから生成AIを取り入れるとインパクトが大きく、他社との会議中に呼び出すと良い話題にもなったという。
一方、生成AIを業務を導入する上では「常時高いサービスレベルを期待してしまうとリスクになり得る」ということも分かったという。
KDDI AI-Chatでは、大規模言語モデル「GPT-3.5」などのAPIを米Microsoftのクラウドで使える「Azure OpenAI Service」を利用している。しかし、Azure側に障害が発生し、AIモデルの応答時間が長期化したり、システムエラーを返したりする問題がアプリリリース後に発生した。
「AIに限った話ではないが、クラウドサービスを使う際は各サービスの可用性を考慮してシステム全体を設計する必要がある。そのため、AIを活用した機能は『AIが止まってしまうと直ちに困るような業務に組み込むことは避ける』を前提としつつ、実装上の対策としてモデルを呼び出すアプリケーションでタイムアウトやエラーハンドリングを適切に行い、利用者に分かりやすいメッセージを返すことで障害時の問い合わせが殺到してしまわないような工夫も必要だと学んだ」(KAG)
Teamsアプリのリリース後、1000リクエスト/日ほどの利用状況で推移しており、一定の利用が続いている(12月6日時点)。一方、同社は「社内向けAIチャットは、リリースしてしばらくたつと利用率が減少する傾向がある」とも分析しており、継続して利用率を高めるために社内への啓もう活動や、課題の把握などに努めたいとしている。
「生成AIを活用した機能の実装は予想していたほど複雑ではなく、より重要な課題になったのはセキュリティに関する問題だった。セキュリティ上の課題やその解決方法など、実際に導入する視点に立ってみないと気付けないこと、分からないことも多かった。生成AIに関するナレッジの習得には、とにかく実践的に触れ実装を行ってみることが重要なアクションだと思う」(KAG)
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