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AIが漫画を描いて、人間は確定申告に奔走――そうならないための付き合い方を考えてみた

» 2024年02月22日 17時30分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 「AIの仕事はゲームをプレイしたり漫画を描いたりすることで、人間の仕事は確定申告のために領収書を集めるといった役割分担になるとディストピアですよね」――こう話すのは、生成AI活用の第一人者である深津貴之さんだ。

 生産性の向上を求めるあまり、人間が楽しいと感じる仕事までAIに任せるとやる気が削がれてしまう。従業員が「人間がやるような仕事ではない」「この作業をするくらいなら早く帰宅したい」と思う部分にAIを取り入れるのが大切だと深津さんは指摘する。

 AIと人間がうまく付き合うにはどうすればいいのか。ITmedia主催のオンラインイベント「デジタル戦略EXPO」(2月25日まで)の特別講演に登壇した深津さんと、独自LLMの開発などを進めるサイバーエージェントの毛利真崇さん、ITmedia NEWSの井上輝一編集長がディスカッションした。

photo ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 冬

「小手先だけのAI活用」を避けるには

 “生成AIブーム”が到来する前は、人間は創造的な仕事で価値を発揮するといわれていた。しかし、ふたを開けてみると生成AIは画像生成や企画立案など創造的な仕事も難なくこなしてしまう。人間とAIの得意分野が被っているので、いざAIを導入しようにも役割分担が難しい。

 深津さんは、日報や経費申請を書かせたり議事録をまとめたりする作業から生成AIを使い始めるのがいいと勧める。AIに寄りかかりつつ、人間のやる気を邪魔しない範囲で業務変革の第一歩目を踏み出せる。そうはいっても“面倒な仕事”なら何でもAIを使えばいいかというとそうではない。

 例えばメールの骨子を3行だけ書いて、生成AIであいさつ文や本文を補って長文のビジネスメールに仕上げたとする。しかし受信者は長文を読みたくないから、生成AIを使って3行に要約する。すると、電気代と時間を浪費するだけのAI活用になってしまう。

 AIを業務に取り入れる段階になったら、AIの性能をフル活用できるオペレーションを整えて、それに沿って業務をする体制にしないと「小手先だけのAI活用になってしまう」と深津さんは指摘する。

photo 深津貴之さん(THE GUILD 代表取締役)

AIと人間の付き合い方 サイバーエージェントの場合

 生成AIと人間がうまく付き合っているのがサイバーエージェントだ。同社はインターネット広告の制作支援システム「極予測AI」に、ChatGPTをはじめとする複数のAIを組み込んで広告効果の予測やキャッチコピーの自動生成に取り組んでいる。

 人間が作った画像や動画などの広告クリエイティブの効果を予測して、既存の広告効果を上回るクリエイティブの制作に役立ててきた。ゆくゆくはクリエイティブの自動生成も視野に入れている。その背景には人間の価値を伸ばすような使い方を探る姿勢があると同社の毛利真崇さん(AI事業本部 AIクリエイティブDiv. 統括)は話す。

 「人間をAIに置き換えるわけではなく『クリエイターを拡張する』という言葉を使っています。一人の能力を最大化するためにAIが支援できるかにチャレンジしています。人間は『この方向の画像を作って』など上流の工程を担当できますし、手足が増えるので一人が出せる成果が飛躍的に上がります」(毛利さん)

photo サイバーエージェントの毛利真崇さん(AI事業本部 AIクリエイティブDiv. 統括)

AIの価値を経営層に理解してもらう“意外なアイデア”

 AIの価値を享受するには、サイバーエージェントのようにAIを活用する狙いを定めてオペレーションを整えることが重要だ。そして、これは「DX推進」として長らく日本企業に求められてきたことでもある。

 「今まではDXがあまり進んでいませんでしたが、これからは期待できます。みんながAIに生産性を上げる方法を聞くようになれば、AIが提案します。それを続ければだんだんとDXは加速すると思います」(深津さん)

 DXやAI活用をスムーズに進めるには経営層の理解が欠かせない。深津さんは経営層にAIの価値を伝えるアイデアとして「強くお勧めしていること」を紹介した。それを実行すれば「出世街道に乗れると思う」という方法とは――この続きはぜひオンラインイベントのアーカイブ配信をチェックしてほしい。

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深津貴之氏 × サイバーエージェントが語る生成AIの活用方法

 企業は生成AIをどう活用すればいいのか――深津貴之氏と、独自LLMを開発したサイバーエージェントの毛利真崇氏が対談したイベント「ITmedia デジタル戦略EXPO」をこちらから無料でご視聴いただけます

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