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フリーランスになって初めての「確定申告」 やってみて分かった“意外”な落とし穴(後編)(1/4 ページ)

» 2024年02月28日 12時30分 公開
[斎藤健二ITmedia]

2023年夏に、勤め先であったアイティメディア社を退職してフリーランスとなった筆者。面倒な確定申告を、いかに手間なく簡単に、かつお得になるようにやってみたという趣旨のもと、SaaSを存分に活用した実体験をお届けしたい。

マネーフォワードMEのデータを連携が便利

 前半はfreee開業で開業届と青色申告承認申請書を提出、Misocaで請求書を作成発行した。では確定申告の本丸である、複式簿記を使った貸借対照表と損益計算書はどうやって作るかというと、今回は「マネーフォワードクラウド確定申告」を選んだ。

 こちらもSaaS型の確定申告ソフトだ。経費と売り上げデータからいわゆる仕訳を作成し、それを元に青色申告決算書および確定申告書を作成できる。事業所得を申告できる無料プランはないので、月額1408円の最小限プランを選択した。最低1カ月間の利用で書類作成も電子申告も行える。

 さてマネーフォワードクラウド確定申告を選択した最大の理由は、家計簿ソフト「マネーフォワードME」との連携だ。筆者は日常的にマネーフォワードMEを使い、クレジットカードの明細や銀行口座の情報を取り込んでいる。これらの入出金履歴から、事業で使ったものに「確定申告」チェックを付けておくと、そのデータをまとめて取り込んで決算書を作成できる機能があるのだ。

取り込んだ入出金明細に「確定申告」チェック欄があるので、これをオンにするだけでいい
この機能、すごく便利! あとはAIによる自動チェックと一括登録ができるようになると完璧だ

 日常的に家計簿としてマネーフォワードMEを使っている中で、「これは事業でかかった経費だな」と思ったら確定申告マークをチェック。これをやっておくだけで、決算用の売り上げや経費の入力がほぼ終わってしまう。素晴らしく便利だということで、今回の確定申告にはマネーフォワードクラウド確定申告を選んだ。

 ちなみにマネーフォワードMEは有料プランでなくてもこの機能を利用できるが、無料プランの場合、1年以上前のデータは閲覧や操作ができない。つまり確定申告で利用しようとしたら、今だと2023年1月分の情報は扱えないわけで、基本的に有料プランに加入している前提となる。

 「あれ? 同じようなことはfreeeや弥生の会計ソフトでもできるんじゃないか?」と思った人もいると思う。その通り、他SaaSでも銀行やクレジットカードを連携してデータを取り込むことができる。それに対してマネーフォワードMEを使う利点は、普段使っている家計簿データと一体化していて、わざわざ会計ソフトを触らないで済むということが一つ。そしてもう一つは対応する金融機関の数の多さだ。

 例えばfreeeは楽天銀行とのデータ連携を、22年2月から23年12月まで停止していた。両者の条件が折り合わなかったということだが、ユーザーからすると困ったことだ。その点、マネーフォワードは安定して連携を継続している。

 今回大きな問題だったのが交通系ICへの対応だ。筆者は現在モバイルPASMOを利用しているのだが、なんとfreeeはモバイルPASMOの取り込みに対応していない。モバイルSuicaだけなのだ。翌年分からモバイルSuicaを利用するようにすればfreeeでもよかったのかもしれないが、23年分はもうどうしようもない。ライター業務の経費のほとんどは実は交通費だ。これをいちいち入力することを考えると、取り込みに対応しているSaaSでないとやっていられない。

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