ここまで、次のステップで書類を用意してきた。
確定申告書の作成自体は毎年やっているので、あとは簡単……。と気を抜いたところで落とし穴があった。マネーフォワードクラウド確定申告の確定申告は、フル機能ではないのだ。
例えば、医療費控除については2024年からやっと、国税庁が提供している内訳Excelファイルの入力に対応するようになった。またふるさと納税のXMLファイル読み込みなどもOKだ。ただ、ちょっとマニアックな項目については対応していない。
例えば、副業やクラウドファンディングなどの収支を記入する「収支内訳書(雑所得申告用)」とか、「暗号資産の計算書」、米国株式からの配当の二重課税を取り戻す「外国税額控除に関する明細書」などは非対応だ。これらは個別に計算して転記すればいいのだが、フォームに入力すれば明細書を作ってくれる国税庁の確定申告アプリのほうが機能は上だ。
さらに上場株式の譲渡損失の繰越控除も面倒だ。これは株取引で損失が出た場合、3年間繰り越せるというもの。国税庁のアプリなら、前年データを読み込ませれば自動的に引き継いでくれるが、マネーフォワードクラウド確定申告の場合は手動で転記しなくてはならない。これは機能不足というよりも、最初に使ったアプリにロックインされたともいえる。
そんなわけで、マネーフォワードクラウド確定申告では青色申告決算書まで作成して、これを国税庁のアプリに読み込んで、確定申告と電子申告は従来通り国税庁アプリで行おうと思ったところ、落とし穴があった。作成データはベンダーごとに独自で、マネーフォワードクラウド確定申告のデータは国税庁のアプリで読み込めないというのだ。
「国税庁アプリを使いたい場合は、作成した青色決算申告書を転記するのが一番簡単」だと教えてくれたのは、マネーフォワードが開催した確定申告のユーザー会で講師を勤めた高橋和也税理士だ。
つまり全てマネーフォワードクラウド確定申告で完了させるか、マネーフォワードで作ったデータを国税庁アプリに転記して、国税庁アプリで青色決算書+所得税の確定申告も終わらせるかの二択ということになる(インストール版のe-Taxソフトを使えば別の方法もあるようだけれど、Macには対応していないので選択肢には入らなかった)。
ちょっと迷ったが、国税庁アプリにマネーフォワードで作った決算書を転記してみることにした。これがあまりに面倒なら、全部マネーフォワードクラウド確定申告でやってみようというもくろみだ。結論からいうと、転記はとっても簡単だった。
青色申告決算書は、損益計算書、月別売上金額および仕入れ金額、売上・仕入れ明細と減価償却費、貸借対照表の合計4枚でできている。この数字を国税庁アプリに入力していけば、10分もかからずに完了した。国税庁アプリは仕訳を入力して決算書を作る機能は持っていないので、結局のところ何らか会計ソフトのお世話になるほうが簡単だということだ。
ここまでくれば、あとは例年通り、個人の確定申告を行うだけ。幸いなことに筆者は零細なため消費税の免税事業者であり、面倒なインボイス制度の対応も消費税の申告書作成も必要ない。これでやっと、令和5年分の確定申告が終わる。
振り返ると、マネーフォワードMEからデータを読み込んで仕訳を作成し、そこから決算書を出力するまでは非常にスピーディーだった。マネーフォワードクラウド確定申告があまりに多機能なので、どこに何の機能があるのかを把握するのに時間がかかってしまったが、全体像がつかめてからはパッパと完了した。次回はおそらく30分程度で完了するだろう。
国税庁のアプリへの転記も30分かかっていない。ただすでにデジタルデータなのに、お互いのフォーマットが異なるせいで手で入力しなおさなければいけないのは前時代的だ。マネーフォワードクラウド確定申告がフル機能に対応して、かつ国税庁アプリの前年データを引き継げるならそれでもいいのだが、現在のところ手作業で再入力するのが最も簡単そうだ。
複式簿記を使った決算書の作成と聞くと、なにやらとても難しそうに感じるが、最新のSaaSを活用すればほんの数時間で作業が完了するのは新鮮な驚きだ。一方で、複数のサービスを連携して使おうとするとさまざまなハードルがあることも実感した。この分野の機能開発のスピードは著しいので、25年はもっと簡単になっていることを楽しみにしている。
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