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通信品質は本当に改善したのか? ポジティブな話題が少ない「ドコモのいま」房野麻子「モバイル新時代」(1/3 ページ)

» 2024年03月01日 18時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 2023年初頭から、ドコモの通信品質の低下が指摘されてきた。都市部を中心にデータ通信の速度が低下する「パケ詰まり」と呼ばれる現象が起こり、つながりにくいという声がSNSなどで目立っていた。

 それに対しドコモは、まず4月のメディア向け説明会で、夏までに対策すると発表。7月下旬には、特につながりにくい状況だった都内4エリア(新宿・渋谷・池袋・新橋)の通信品質改善状況を公表した。その際に引き続き全国エリアで品質向上の取り組みを実施するとしていた。

 10月10日には再び記者説明会を開催し、ネットワーク本部長 常務執行役員の小林宏氏が具体的な改善策を説明。対策が必要となるエリアを予測し、駅、繁華街、住宅街など全国2000カ所以上の「点」での対策と、人の移動が多い鉄道動線でも快適に利用できるよう「線」での対策を集中的に行うとした。この集中対策には300億円を先行投資し、12月までに90%以上終了させるとしていた。

NTTドコモ ネットワーク本部長 常務執行役員 小林 宏氏

 そして24年に入り、2月の決算会見で10月に説明したネットワーク改善の集中対策が計画通り完了し、通信品質が大きく改善したと報告した。改善箇所については下りのスループットが1.7倍になり、最繁時間帯でもドコモが規定している品質水準を上回っているという。

 東京都内のほか、JR大阪駅、JR名古屋駅でもスループットが向上。また、主な鉄道動線に対して既存の基地局を活用した対策も完了し、乗車時間の90%で快適に動画を視聴できるようになっているという。

改善箇所の下り通信のスループットが1.7倍に改善
鉄道動線でも対策後、品質が改善。

 アプリを利用した体感品質の把握も開始した。10月に行われた記者説明会では、SNSの情報に対してドコモのLLM基盤を活用することで品質が低下している場所を特定する方法が説明されたが、加えてd払いアプリや動画視聴アプリ、Webアプリを活用して体感品質を把握するという。d払いアプリを活用した調査は1月から実施されているそうだ。

d払いアプリの場合は、バーコードが表示されるまでの時間をチェックするという。どこでどれくらいの時間がかかるのか、地図上に柱で表示する(スライド右側)。柱の長はバーコードが表示されるまでの時間、色は電波の品質を表している

 SNSを分析すると、X(旧Twitter)での通信品質に関するネガティブな投稿は、3月時点から約75%減少。イベント対策も強化し、コミックマーケット103では下りスループットが約1.5倍改善した。SNSのネガティブ投稿も約80%減少したという。「夏よりドコモ回線が使えている」「ドコモ回線が好調」といった「ありがたい声ももらった」(小林氏)そうだ。

ドコモの主張と乖離するユーザーの声

 ネット上でのネガティブな投稿は確かに減っている印象だ。ドコモ回線を使っているMVNO関係者にも聞いてみたところ、23年秋頃からネットワークに関するネガティブな投稿は格段に減ったと話していた。

 その一方で「まだ改善されていない場所がある」という声があるのも事実だ。筆者の周りはネットワーク品質に敏感な人が多いせいもあるが、スピードテストでドコモの通信速度をチェックして不満を漏らしているSNS投稿をいまだによく見かける。

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