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就活の自己アピールにも生成AIの影 “就活ハック”はどこまで許されるのか?小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2024年03月19日 19時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

就活のHackはどこまで許されるのか

 リクルートワークスの調査によれば、2024年卒の大卒求人倍率は1.71倍となっている。つまり1人の就活生に対して平均1.7社が採用希望ということになり、現在はかなりの売り手市場だ。エントリーシートを100社に送って全てお祈りされたような武勇伝を持つ世代からすれば、夢のようだろう。

 ワンキャリアの実態調査によれば、この売り手市場において学生達がもっとも重視するのは「給料」だそうである。

直近の新卒採用市場トレンド(ワンキャリア実態調査)

 それに呼応する形で、初任給を奮発する企業が増えている。中には入社3年目でバリバリやれる世代よりも新卒初任給のほうが高いという珍現象も見られるようになり、それが原因で使える人材がやる気を無くすというケースもあるようだ

 とはいえ、終身雇用制が崩壊した現在、自分のキャリア形成のためには転職は付きものなので、企業側としては急に辞められると困るだろうが、ある意味こうしたシャッフルが行われることは織り込み済みとして採用するしかない。そもそも大学できっちりキャリアデザインの授業が行われており、企業分析・業界分析した結果、転職がもっとも手っ取り早いキャリアアップの手段と気付くまでに対して時間はかからないはずだ。

 記者説明当日は現役の大学生がワークショップに参加し、実際にAdobe Expressを使ってプレゼンシートを作るというプロセスを体験していた。参加の学生は、Adobe Expressを触るのは初めてという人も多かったが、自分のPCを持ち込み、手慣れた様子で制作していた。今どきの大学生はスマホしか使えないと思われているふしもあるが、スマホやカメラなどに使い、本格的な作業はPCでという使い分けがすでにできている様子も確認できた。

 テンプレートからベースとなるデザインを選び、自分の写真を取り込んでAIで背景を切り取り、表紙に貼り付ける。切り抜き作業は昔は手作業であり、要するに普通の人にはできないので、写真は背景ごと貼り付けるしかなかった。AIがなければ、そもそもやってない作業である。

 さらに普段着で撮影された写真を、生成AIでスーツに着替えさせることもできる。なるほど。

 確かにそれもAIならではの方法ではあるが、就活でそれはアリなのだろうか。ポートフォリオはその人となりを見るためのものであり、採用担当者はわざわざ就活のために、あるいは自社にエントリーするためにわざわざスーツで写真を撮ったものだと思うだろう。その努力を評価するという事はありうる。

 だがそのイメージは、AIでチョチョイといじった、ウソだ。実際にはスーツで写真を撮っていないし、そもそも着せ替えたスーツなど持ってもいない。印象は大事だが、事実でなくても体裁だけ整えればよいということを就活向けのワークショップで指導するのは、正しいことなのか。ポートフォリオは、事実でなくても構わないのか。

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