ITmedia NEWS > 社会とIT >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

米Amazonが無人レジシステムを大幅縮小、そのワケは? 「実は人力だった」報道は否定

» 2024年04月15日 08時00分 公開
[鈴木聖子ITmedia]

 米Amazonが大々的に展開していたレジなし精算システム「Just Walk Out」の縮小を迫られている。AIを駆使した無人化が売りのはずだったこの技術を巡り、実はインドから1000人の人力で運営を支えていたと報じられた他、レジなし店舗を巡るさまざまな課題も浮かび上がった。

「Just Walk Out」のPR動画から引用

 Just Walk Outは買い物客が手に取った商品をAIで正確に識別できるとうたったシステムで、導入店舗ではAmazonのクレジットカードやアプリをかざして入店すれば「センサー、カメラ、ディープラーニングツールで客が棚から取った商品を感知できる」とAmazonは宣伝していた。客がそのまま店を出れば自動的に課金される仕組みで、レジ待ちの行列に並んだりセルフレジを使ったりする必要はなくなるというのが売りだった。

Just Walk Outの利用フロー

 しかし報道によると、Amazonはこのほど、米国で展開している食品スーパー「Amazon Fresh」の40店舗あまりでJust Walk Outを廃止し、代わってスマートショッピングカートの「Dash Cart」を導入する計画を明らかにした。このカートは精算画面とスキャナー搭載で、客が購入する商品をスキャンしてカートに入れると画面に合計金額が表示され、オンラインショッピングリストにリンクさせて会計を済ませることができる。

 Just Walk Outはスーパーよりも規模の小さい「Amazon Go」のようなコンビニエンスストアの他、スポーツ競技場や大学の売店などで使い続ける予定だという。

レジなし精算は人力頼みだった? Amazonは「誤解であり不正確」と否定

 米メディア「The Information」によると、Amazonはインドから約1000人の人力でJust Walk Outを使った精算内容をチェックしたり、機械学習モデルのためにビデオ映像のラベル付けをしたりしていたという。

 2022年半ばの時点でも、Just Walk Outの精算検証のために買い物1000回につき700人の人員を要していたとされ、必要な人員を1000件当たり20〜50人に減らすとしていた目標を大幅に下回ったとThe Informationは伝えている。

 そうした目標が達成できないまま人力に頼っていたため、客が店を出てからレシートを受け取るまでに何時間もかかることもあったらしい。

 こうした報道に対してAmazonはメディア各社に寄せたコメントで、Just Walk Outに関係する従業員がインドにいたことは認めつつ、そうした従業員は主にJust Walk Outに使われるモデルの学習を支援していたと説明。「Just Walk Outの技術はインドからライブで買い物客を見ている人間頼みだったとする認識は誤解であり不正確」と強調した。

 その上で、「個人が購入した商品について、コンピュータビジョン技術で確信を持って識別できない場合、ごく少数の買い物については従業員が確認することもある」とした。

レジなし店舗が不評だった理由

 Just Walk OutはAmazonが16年に発表したシステムで、20年に1号店が開店したAmazon Freshや、17年に買収した食品チェーンのWhole Foodsに導入していた。Amazon Freshは全米で40店舗以上をオープンさせたものの、23年になって新たな出店を見合わせる方針を明らかにした。

 Amazon Freshのような大型スーパーでは、特に大量の食品を購入する客の間で、野菜や果物の重さを測るなど余分な手間がかかるという理由でレジなし精算は不評だったという。

Amazon Freshの店内(Googleマップから引用

 さらに「買い物客は近くにある商品やお買い得商品を簡単に見つけたり、買い物しながらレシートを見たり、どれだけ節約したかを把握したいと思っていた」とAmazonは言い、そうしたオプションを全て提供できるのがDash Cartだと説明している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.