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ネット社会は「身元不明死」に対応できるか小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2024年04月16日 17時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

「音信不通」をどう拾うか

 同居している家族があれば、何かあればすぐ分かる。だが高齢者の一人暮らしは、生涯独身だからという事ではなく、配偶者の死により一人暮らしとなった例も少なくない。令和5年公開の内閣府「高齢社会白書」によれば、65歳以上の人口に占める一人暮らしの割合は、令和2年には男性15.0%、女性22.1%となっている。この傾向は、年々増加している。

65歳以上の一人暮らしの者の動向(令和5年内閣府「高齢社会白書」)

 先の例では、亡くなったのが正月明けで、付き合いのあったご友人が異変に気づいたのが4月ということなので、およそ3カ月間、亡くなっていることに気付かれなかったという事になる。役所が頑張っていれば早く分かったと言えばそうなのだが、異変の発見には友人知人、近所の人など複数のルートがあっていいはずだ。

 そういえば、こんなことがあった。筆者がさいたま市に一軒家を借りて引っ越した際、隣の家は男性高齢者の1人暮らしだという話を聞いていた。あいさつに行っても面会は適わず、近所の人に聞いても居るはずだ、というだけで手掛かりがない。特に悪い評判も聞かなかったが、ご近所付き合いがないことで、詳細を誰も知らなかった。

 だが引っ越して数カ月後、突如隣家が取り壊しとなった。おそらく親族が売却したのか、更地となり別の家が立てられた。すでに筆者が越してきたときには入院や施設に入るなどしていなかったのか、あるいはそこで亡くなっていたのか、筆者も含め近所の住民には結局何も分からないままだった。

 「ご近所アラート」が発動するには、近所付き合いがあるかどうかが明暗を分ける。近所に住んでいても親しくなければ、他人の家の事情にはなかなか立ち入れないし、親族がいるのかいないのかも分からない。結局、行政か警察につなぐぐらいのことしかできない。

 元大学教授の例では、近所の方は救急搬送されたところを見ているので、居ないことは分かっていた。あとは病院で誰かが面倒みているのだろうと思って、親族への連絡は見送っていたのだろう。

 他に考えられるアラートとしては、友人関係がある。先の例もご友人が異変に気づいたから3カ月で済んだわけで、それがなければ来年の正月まで気付かれない可能性もあっただろう。

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