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ChatGPT登場後に仕事急増も単価はダウン? 買いたたかれる「ビデオ編集」スキルの今後小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2024年05月02日 09時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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「ビデオ編集」は大きく2つある

 先の調査の意味するところは、AIの登場により、うまいこと生き残れる職業と、生き残れない職業が本当に出てきたということだ。

 デザインは、良い/悪い、好き/嫌いが分かりやすいが、ビデオ編集はよい編集/悪い編集という評価の俎上(そじょう)にのぼりにくい。つまり今はまだできないだけで、将来的にはAIに取って代わられる可能性が高い事を示している。

 ビデオ編集というスキルは、今やWebライター並みにちょこっと有料セミナーとかに参加すれば、誰でも身につけられると思われているようだ。数日で、あるいは数時間であなたも副業ビデオ編集者みたいなスクールの広告を目にするたび、一体何をどう教えればそれほど短時間のうちに編集ができるようになるのか、40年前にテレビ番組の編集者として社会人人生をスタートしたオジサンは考え込んでしまう。

 そうした短期の学習でやれる仕事もそこそこあるのかもしれないが、もうかる話ではないだろう。映画のようにコンテンツそのもので客が呼べるものを作る人達の下には、セールスやコミュニケーションのために、作業としてビデオ編集を行うという裾野が広大に拡がるという図式である。

 こうした「要約作業」としてのビデオ編集であれば、専門職やフリーランスに依頼するというケースは縮小するだろう。会社としては、「そこにお金がかかるなら、もう自分でやれば?」 という話になるからだ。実際AIの助けがあれば、動画からスピーチやインタビューの内容をテキストに起こしてサマリー化し、それ通りに編集するところまで行けるようになっている。まだ一般の人が、そのやり方を知らないだけだ。

 一方でお金が取れる映像作品を作るという意味でのビデオ編集は、同じワードで表現していいのかというほどに、作業内容が違っている。そちらの名前を変えるか、あるいは作業としてのビデオ編集の方の名前を変えるかして、区別していく必要があるだろう。

 コミュニケーション手法としてのビデオ編集は、今後メールやテキストチャットでのマナーやリテラシーと同じ文脈で、教育の中に組み込んでいく必要がある。それが社会の要請である以上、教育機関としては避けて通れない。大学でもレポートの動画提出というのは、今後コミュニケーション系の学部・学科では起こりうる変化だろう。WordやPowerPointと同じ土俵で、Premiere Proが語られる日もそう遠くない。

 さすがに資格のようなものまではいらないと個人的には思っているが、もうすでに動画編集に関しての検定や資格試験は複数あるようだ。社会側がスキル判定として必要とするなら、こうした資格も質を変えて、就職時に注目される時が来るかもしれない。

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