――では現状、屋外に向けた技術はどうなっていますか? 特に、位置認識技術は重要です
マクレドン:私たちは、カメラの画像から正確に位置を把握する「Visual Positioning System(VPS)」にフォーカスしてきました。屋外の地図を作成し、カメラの画像から位置を正確に把握できるのですが、同様に屋内での位置把握もうまくいっています。
この技術を使った共有AR機能は、弊社のフレームワークであるLightshipのSDKに追加されました。
セマンティクス(意味把握)については2つの方向性があります。空間での位置を把握するセマンティクスと、リアルタイムセマンティクスの2つです。
特にリアルタイムセマンティクスでは、15ミリ秒で200種類の物体を見分けられます。
「Peridot」というゲームでその例を見ることができますが、クリーチャーは周囲の環境を認識し、それに反応します。これはリアルタイム・セマンティクスの力ですが、私たちは同時に、VPSも使って地図を作っています。
その副次的な効果として、この場所のシーンにある「すべての種類のオブジェクト」のセマンティック・メッシュがあります。
要は私たちは、世界のセマンティックなマップ(そこに置かれたものが何かという情報を把握した地図)を構築しているのです。
――そこで生成AIとの関係を伺います。マルチモーダルな生成AIを使うとセグメンテーションもセマンティックもできる。それらと現在のアプリケーションの関係を教えてください
マクレドン:それは非常にいい質問です。セグメンテーションを生成AIで行うのは、非常にコストが高い。あなたが写真を撮ってクラウドにアップロードし、セグメンテーションを計算するために多くのクラウドコストを使い、それを携帯電話に戻す。これにはコストもかかるし時間もかかります。
弊社が方法は、15ミリ秒でリアルタイムのセマンティクスを提供し、そのセマンティクス情報をテキストにして生成AIにアップロードし、そこから見たことの説明を得るというものです。
このように、私たちのセマンティック技術と生成AIは、組み合わせる形で成り立つのです。第一、その方がずっと安上がりですからね。
――現在のARは広告に依存しています。ナイアンティックのビジネスとしても、8th Wallを使ったマーケティングキャンペーン向けのものが多い。こうした使い方の将来をどう見ていますか?
マクレドン:確かにその通りです。最近は「ポケモンGO」の中に8th Wallを使った広告を組み込みました。これはARになっていて、現実世界の中に3Dオブジェクトを組み合わせて体験できます
――ポケモンGOはUnityで作られたアプリケーションです。その中に、Web技術をベースとしている8th WallのARを組み込んだわけですね?
マクレドン:はい。ポケモンGOの中の広告をクリックすると、Webインタフェースのエクスペリエンスに切り替わり、ARで表示されます。1つの広告キャンペーンで何千万回ものインプレッションを獲得しました。大手ブランドがポケモンを活用するキャンペーンを構築するために契約しています。
――Web技術との融合について伺います。8th WallはWebからXRを使うオープンな「WebXR」をベースに作られています。こうした技術はより広がっていくのでしょうか
マクレドン:一般論として、アプリケーションを作るコストは、App StoreやGoogle Playではかなり高いです。
しかしWeb技術ならそれが軽減できる。近い将来、もっと簡単になるでしょう。ARや単なる3Dゲームでの経験を作成するためのハードルも同様です。
――ということは、大規模なゲームなどを作るための技術もローカルアプリからウェブベース、特にWebXRに移行していくとお考えですか?
マクレドン:それが私たちの目標です。より複雑なアプリケーションを構築するためのいくつかの道筋が見えてきており、6月に開催されるAWE(アメリカ・ロングビーチで開催されるXR関連イベント)では、その一端をお見せできると思います。
Unityは、大規模なゲーム開発を中心に多くの強みがあり、多くの大作ゲームがUnityを使っています。われわれのポケモンGOやMonster Hunter Nowもそうです。
しかし、大規模なゲームをXRで開発するチャンスもあると思います。私たちが構築しているツールは、他の人にとっても非常に役に立つと信じています。
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