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Neuralink、脳チップ初治験者のチップ不具合とその修正について報告

» 2024年05月10日 10時13分 公開
[ITmedia]

 イーロン・マスク氏率いる米BMI(脳マシンインタフェース)企業Neuralinkは5月8日(現地時間)、BCI(Brain-Computer Interface)埋め込みの最初の治験者の、手術から約100日経過した近況を報告した。

 同社は3月、1月にBCI(NeuralinkはThe Linkと呼んでいる)を埋め込んだ治験者ノーラン・アーボー氏(29)を初めて紹介した。

 アーボー氏は現在、Linkを介して頭の中でカーソルを制御することで、友人とオンラインゲームをプレイしたり、MacBookでアプリを使ったり、Nintendo Switchでマリオカートをプレイしたりしているという。

 アーボー氏のLinkの1日当たりの使用時間は約30分から約14時間で、平均して6〜8時間という。

 Neuralinkは、Linkのパフォーマンスを、カーソル制御の速度と精度の標準的な尺度として、グリッドタスクで計算されるビット/秒(BPS)を使い、グラフで表示した。BPSが高いほど、カーソル制御がうまくいっていることを示す。

 neuralink 1 BCI使用時間グラフ(画像:Neuralink)

 グラフで3月の数日間が0になっているのは、「多数のthreads(スレッド)が脳から退縮し、有効な電極数が減少した」ためという。

 この変化に対処するため、Neuralinkは神経集団信号の感度を高めるために、記録アルゴリズムの修正、信号をカーソルの動きに変換する技術の改善、UIの強化などを行った結果、BPSは改善され、初期のパフォーマンスを上回るようになった。

 スレッドとは、神経活動を検出する1024個の電極を搭載した64本の糸のことだ。Neuralinkによると、人間の毛髪よりも細いという。この糸は、手術ロボットによって脳に挿入される。

 neuralink 2 Link(画像:Neuralink)

 Neuralinkはスレッドが退縮した原因については明らかにしていないが、この報告は米Wall Street JournalがLinkの不具合について報じた翌日に公開された。

 Wall Street Journalは、問題の原因は手術後にアーボー氏の頭蓋骨内に空気が残ったのではないかという仮説を紹介している。この治験に詳しい情報筋によると、問題特定後、Link除去も検討されたという。

 Neuralinkは引き続き、治験参加者を募集している。

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