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今後どうなる? 作った電気がムダになる再エネの「出力制御」 解決策は?小寺信良のIT大作戦(3/4 ページ)

» 2024年07月10日 15時50分 公開
[小寺信良ITmedia]

これから起こること

 系統電力用蓄電池としてすでに実用化されているものには、揚水発電やNAS電池、燃料電池、上記の例もあるように鉄空気電池などがある。これは容量だけでなく、応答速度や入出力量など、性質が違うものを組み合わせて使用する必要がある。

 東京電力ホールディングスが開発している貯蔵システムは、電力を水素に変換して特殊合金に貯蔵する仕組みだ。やっていることは水の電気分解である。水の電気分解の逆をやるのが燃料電池で、水素と酸素を結合させて電力を得る。

 このシステム内では逆動作は想定しておらず、できた水素は別途燃料電池の材料となるようだ。従って、充放電を1台でやる蓄電池とはちょっと違う。実用化は27年頃という見込みで、まだ3年近くある。

 日本発の技術として注目を集めるペロブスカイト太陽電池の実用化は、早くて25年ごろといわれている。これが普及すれば、ますますソーラー発電比率は高くなる。それまでに出力制御問題解決の光明が見いだせなければ、普及は難しくなるだろう。

 欧米ですでに起こっているのが、いわゆる電力の逆ざやだ。余った電力は電力会社が売るのではなく、むしろお金を払って引き取ってもらうという「ネガティブプライス」である。消費者としては、電気を使うとお金ももらえるというわけだ。

ネガティブプライスの形成メカニズム(23年12月「出力制御対策パッケージについて」資源エネルギー庁公開資料より抜粋)

 経済産業省の再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会で配布された資料では、ネガティブプライスには一定の効果があると評価しつつも、日本では関連する諸制度との整合性がどうのこうのと書かれており、要するに「それだけはやりたくないんです」という意識が垣間見える。

ネガティブプライスは「やりたくないんです」(23年12月「出力制御対策パッケージについて」資源エネルギー庁公開資料より抜粋 アンダーラインは筆者)

 他方で、電力バッファーを事業者のみに頼るのではなく、家庭でもやれないかという動きもある。もっとも可能性があるのが、DR機能付きのヒートポンプ給湯器だ。早い話が「エコキュート」である。

需要側での対策例としてエコキュートが注目されている(2023年12月「出力制御対策パッケージについて」資源エネルギー庁公開資料より抜粋)

 DRとはDemand Responseの略で、系統電力の需給バランスに応じてエコキュートの稼働を制御する機能である。「上げDR」は電力が余っている時間に稼働させてお湯を沸かす。「下げDR」は電力が足りない時間帯に稼働を抑制する。

 現在ヒートポンプ給湯器にはDR化へ向けた目標基準がないため、メーカーや機種によってDR機能があったりなかったりしているところだが、今後はなんらかの制度化が行われるだろう。

 エコキュート自体も古いものがたくさんにある。そもそもは深夜電力でお湯を沸かす機器なので、昼間の電力使用量に制限がかかっているものもある。さらには深夜電力も次第に値上がりしており、大半の電力会社では新規加入を停止しているとあって、時代に合わなくなってきている。

 だからDR対応の新モデルを、という流れだが、初期投資が高い、既存設備の入れ替えは大掛かりということもあり、助成金を厚めにしないと入れ替えはなかなか起こらないだろう。

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