この記事は新野淳一氏のブログ「Publickey」に掲載された「グローバルのクラウドインフラ市場シェア。AWSが堅く30%台を維持、オラクルがついにIBMを上回る。2024年第2四半期、Synergy Researchの調査結果」(2024年8月5日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。
調査会社のSynergy Research Groupは、グローバルにおける2024年第2四半期のクラウドインフラの市場状況について発表しました。
クラウドインフラとは、IaaS、PaaS、ホステッドプライベートクラウドを合わせたものを指します。
発表によると、第1四半期のクラウドインフラ市場は1年前の2023年第2四半期と比較して22%成長となり、790億ドル(1ドル150円換算で11兆8500億円)となりました。
グローバルのクラウドインフラ市場の年成長率は、昨年(2023年)第3四半期には18%にまで下がりましたが、ここを底に3四半期連続で20%を超えたことになり、クラウドインフラ市場は再び高い成長率への回帰が明確になってきました。
クラウド別の具体的なシェアの数字は、AWSが32%、Microsoftは23%、Googleは12%でした。
前四半期と比較すると、AWSが1ポイントの上昇、Microsoft Azureはここへ来て2ポイント下落、Google Cloudは1ポイント上昇しています。
これまで順調にシェアを伸ばしてきたMicrosoft Azureのシェアが下落しているのは意外に見えますが、上記のグラフを見て分かるとおり、Microsoft Azureは毎年第2四半期にいったんシェアを落とす傾向があるため、今回のポイント下落もそうした同社特有の定期的な変動要因によるものではないかと思われます。
4位以下のベンダ別のシェアでは、ついにOracleがIBMを抜いたことが示されました。
これにより4位がAlibaba、SalesforceとOracleが同率6位、そしてIBMが7位になるという順位の変動がありました。
OracleとIBMのこれまでのクラウドインフラの歴史を短く振り返ってみましょう。
Oracleは2011年、それまでクラウドに対して否定的であったラリー・エリソン氏が考えをあらため、自社開発によるOracle Cloudを発表してクラウド市場へ参入。積極的な投資による迅速なグローバルでのリージョン展開や高い価格性能比などを特徴として顧客獲得を進めてきました。
一方のIBMは2013年にOpenStackを基盤とした「IBM SmartCloud」でクラウド市場へ本格参入し、同じ年に独立系のクラウドプロバイダーであったSoftLayerを買収。同社の強みでもあるホスティングサービスやプライベートクラウドなどと合わせて、早い時期からクラウドインフラ市場で一定のシェアを獲得していました。
IBM SoftLayerは2016年に「Bluemix Infastructure」へとブランド変更されてSoftLayerブランドは終了。しかしその1年後にはBluemixブランドも終了して「IBM Cloud」ブランドに再変更されるなど、迷走が続きました。
IBM Cloudは2020年に大阪リージョンを開始するなどのアップデートがありつつも、競合他社と比較して大きな展開がなかなか見られない一方で、オラクルはMicrosof AzureやGoogle Cloudとの接続、顧客のデータセンター内にOracle Cloudを展開できる新サービスなど独自路線での進化を継続してきました。
こうした経緯の末に、クラウドインフラ市場においてOracleがIBMを上回る変化が起きたことになります。
Synergy Research Groupは今回、4位以下のクラウドベンダの中でOracle、Huawei、Snowflake、MongoDBの成長率が高いとしてきしていることから、Oracleは今後Salesforceを抜いて単独でグローバル市場において5位のクラウドベンダになると予想されます。
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