Apple M4シリーズは、Apple M3シリーズよりCPU性能が強化されている関係でより広いメモリ帯域を必要とする。特に高性能CPUコアは10ワイド命令デコーダや分岐予測の改善などにより処理の並列化が加速されており、より広帯域のメモリアクセスを要求する。
メモリアクセスを広帯域化するにはメモリバス幅を広げる方法とメモリの動作速度を向上させる方法との2つがあるが、前者を用いてスケーラブルにCPUやGPUを増強しているのがProシリーズとMaxシリーズだ。一方、M4シリーズはM3シリーズに対して後者のアプローチを採った。
M3シリーズは全てLPDDR5-6400を使用し、M3が2チップ/128ビット、M3 Proが3チップ/192ビット、M3 Maxは3チップ/384ビットと4チップ/512ビットの2種類がある。コンセプトとしては「CPUやGPUの要求にマッチしたメモリ帯域」となっており、M3 ProがM2 Proより控えめのメモリ帯域となっているのは、主に高性能CPUコアの数の違いによるものだ。M3 ProはM3からの性能の伸び幅(特にCPU)が抑え気味になっており、それゆえにメモリ帯域もそれに見合ったサイズとなっていた。
一方でM4シリーズではM4 Proの位置付けが見直され、再び高性能CPUコアの大幅な増強が行われた。さらにその高性能コア自体も前記の通り強化されたことから、メモリ帯域がM3 Proより大幅に増強されている。
M4 ProとM4 Maxでは、Appleシリコンでは初となるLPDDR5X-8533 SDRAMが採用されている(M4はLPDDR5X-7500)。LPDDR5X-8533は現在流通しているLPDDR SDRAMでは最も高速なメモリ(上位のLPDDR5X-10600はまだサンプル出荷段階)で、その採用によりM3シリーズのLPDDR5-6400比で33%アクセス速度が向上した。
さらにM4 ProではM3 Proでは3個だったメモリチップを4個に増やすことで、動作速度向上と合わせて78%もメモリ帯域が拡張されており、大幅な性能アップが期待できる。
M4 MaxはCPUやGPUの総コア数がM3 Maxと比べて大きく変わっていないことから、メモリバス幅は広げずLPDDR5X-8533の採用による33%のメモリ帯域拡張となる。なお、CPUとGPUに無効化コアを持つ14-CPU/32-GPUモデルについては、アクセス帯域要求の緩和に合わせて3チップ構成となり、メモリ帯域は75%に削減されているが、それでも4チップ構成のM3 Maxと同等のメモリ帯域を確保している。
M4、M4 ProとM4 Maxで異なるバス幅のメモリチップが使われているのは、主にコストの関係だ。
M4やM4 Proに使用されている64ビット幅のLPDDR5X SDRAMは、スマートフォンやタブレットにも使用されている市場の大きいメモリチップだが、128ビット幅のLPDDR5X SDRAMはセミカスタムメモリチップに分類され、そのコストに比較的大きな差がある。
このためボリュームゾーンであるM4、M4 Pro搭載機では、調達のしやすさやコストダウンのためにセカンドソースの豊富な64ビット幅のLPDDR5X SDRAMを採用しているものと推測される。
いずれにしても、500GB/sを超えるようなメモリ帯域を持つPCというのはそうそうお目にかかれるものではなく、Appleがユニファイドメモリアーキティクチャ(UMA)に広帯域のメモリアクセスが極めて重要だと考えていることは興味深いところだ。
執筆:MysticRoom Tak.
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