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原因は“伝言ゲーム”? クレカ表現規制で赤松健氏、山田太郎氏らが集会 規制の背景や国内外の現状を解説(2/3 ページ)

» 2024年12月05日 12時00分 公開
[島田拓ITmedia]

“伝言ゲーム”が要因? 荻野さんが語るクレカ表現規制の現状

 うぐいすリボンの活動の一環として、クレジットカードの表現規制に関し、同人ショップなどにヒアリングしてきたという荻野さん。荻野さんも、規制の問題点について「誰がどこで何をやっているのかよく分からない、非常に透明性の低い問題で、だからこそ対応しにくい」と指摘する。

荻野幸太郎さん

 「契約をしている決済代行会社から(取り扱いができないと店に)連絡が来る。その決済代行会社には、シンガポールなどにオフィスを置いてアジア地域を統括しているクレジットカード(ブランド)会社の本社が業務委託した調査会社から、規約違反がないかパトロールしているが、(決済代行会社が契約している)書店のこういう作品が問題があるから対応してください』とメールが来る。この時点で伝聞・伝言ゲームなんです」(荻野さん)

 こうした状況も要因となり、「なんとなく決済できない、インターネット上の売り場から(コンテンツが)消える、事実上の表現規制が進んでしまうという非常に気持ち悪い状況が起きている」と荻野さんは説明する。「日本の場合、実写のポルノをやってるわけではなく、マンガや小説を扱っているが、その題材に、近親相姦であるだとか、動物との性行為などが描かれている」(荻野さん)として、問題の着地点が見えないとしている。

カードブランドの本社がある米国の動向 クレカ表現規制の背景は?

 荻野さんが「実写のポルノ」を持ち出す背景には、クレジットカードブランドの本社がある米国での表現規制の状況がある。荻野さんによると、電子書籍を扱っている米国の書店が規制を受け、売り場から成人向けコンテンツが消えたり、クレジットカードでの決済ができなくなるといったことは起きていないという。

 アダルトサイトについても、本人の同意なくポルノ映像を公開しているとして、一時的に決済が止まることはあったが、各Webサイトが本人確認の制度などを整備し、決済が復活していると語る。

 集会では、米カリフォルニア大学アーバイン校で情報法学を研究するジャック・ラーナー教授もオンラインで登壇。米国におけるクレジットカードの表現規制の動向について解説した。

ジャック・ラーナー教授(集会にはオンラインで登壇)

 ラーナー教授によると、アダルトサイト「Pornhub」運営元であるカナダのMindGeekに対し、13歳の少女が「自分のビデオが無断でアップロードされた」として起こした裁判が、クレジットカードの表現規制に大きな影響を与えたという。この裁判で原告は「多数の児童ポルノが掲載されているのを知っていた」などと主張し、米Visaも被告に指定。Visaは訴訟から外すよう求めたが、裁判所は2022年、そのまま訴訟を継続すると決定したという。

 ラーナー教授は「この裁判はまだ継続中で初期段階にあり、何かしらの結果が出ているわけではない」としつつ、アダルト業界とクレジットカード会社との確執を深めるきっかけになったようだ。これにより、Visa/Mastercardなどのガイドラインが非常に厳しくなったと説明する。

 ただし、米国のガイドラインで規制しているコンテンツについて、ラーナー教授は「同意のない性交の写真や児童ポルノに限っている」と指摘。「日本で起きているような問題のコンテンツはそもそも対象外である」と強調した。

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