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10の25乗年かかる計算を5分未満で Google、新量子チップ「Willow」発表 量子エラー訂正で「閾値以下」達成

» 2024年12月10日 07時21分 公開
[ITmedia]

 米Googleは12月9日(現地時間)、105個の量子ビットを搭載する新量子チップ「Willow」を発表した。このチップは「2つの大きな成果を実現する」という。

 willow

 1つは、いわゆる「量子エラー訂正」の閾値突破で、もう1つは従来のコンピューティングに対する量子パフォーマンスの新たなベンチマーク記録だ。

量子エラー訂正のブレークスルー

 量子コンピュータは、従来のコンピュータでは解けない複雑な問題を解決する可能性を秘めているが、量子ビットは外部環境の影響を受けやすいため、計算中に情報が変化してしまう「量子エラー」が発生しやすい。

 Willowでは、量子ビットの数を増やすほどエラー率が指数関数的に減少するという、量子エラー訂正の理論で長年求められていた「閾値以下」の状態を初めて達成したという。

 具体的には、3×3、5×5、7×7と量子ビットの配列を大きくしていくテストで、エラー率を毎回半分に削減することに成功した。

 さらに、Willowの論理量子ビットの寿命は、それを構成する個々の物理量子ビットの寿命より長くなっている。これにより、量子ビットを増やしてチップのサイズを大きくしてもエラー訂正によって精度を上げられることを意味する。

 willow 2

量子コンピューティングのベンチマーク更新

 Googleは「ランダム回路サンプリング(RCS)」というベンチマークでWillowの性能を計測した。

 その結果、Willowが5分未満で完了した計算は、現行の最速のスーパーコンピュータでは10セプティリオン年(10の25乗年)かかると推定されるという。

 willow 3 ベンチマーク結果(▲は無制限のメモリを備えた理想的な状況を、●はより実用的でGPU上で並列化が可能な実装を表す。画像:Google)

実用化は?

 Willowは、Googleがカリフォルニア州サンタバーバラに建設した施設で製造された。

 GoogleはWillowの次の目標として、従来のコンピュータを超える実用的な計算を実証し、現実世界の問題解決に役立てることを掲げている。例えば、製薬、EV用バッテリー、核融合などの分野で役立つ可能性があるとしている。

 具体的な実用化時期は明確にされていないが、YouTube動画では、WillowはGoogleのロードマップ(下図)の3つ目のマイルストーンにあるとし、今後5年から10年以内に初期的な商用アプリケーションが登場する可能性もあると語っている。

 roadmap 量子コンピューティングのロードマップ(画像:Google)

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