ディスプレイには、HOE(Holographic Optical Element)と呼ばれる、光の出射方向をコントロールできる(特定の波長と入射角を持つ光のみを任意の方向に曲げる)円形状の特殊なスクリーンが取り付けられている。本体の下にはDLPプロジェクターが上向きで取り付けられており、円筒スクリーンの天井に取り付けられた鏡に向かって映像を投影する。
ソニーによると、HOEスクリーンの原理は3Dホログラム映像と同じという。光の入射角や出射角など特定の回折条件を設定したスクリーンに、鏡越しにプロジェクターから照射された“特定の回折条件”に合致する光が当たることで強く拡散(=映像として表示)する。一方で、条件外の光は透過するため、背景が見えるほど透明度が高いスクリーンながら、1000カンデラという高い輝度で映像を表示できる。
では、これを使ってどうやって3D映像を表示させるのか。ソニーは、HOEスクリーンを3600rpm(毎秒60回転)で高速回転させ、そこにDLPプロジェクターの映像を2万1600Hzの超高速リフレッシュレートで投影する方法を編み出した
投影する映像はUnityで制作している。3Dオブジェクトを囲む形でバーチャルカメラを1度ずつ、360度分設置し、それぞれのカメラからXGAの60Hz映像を生成。DLPプロジェクターはHOEスクリーンの回転と同期しており、1度あたり60Hz、それを360度分描写(60Hz×360=2万1600Hz)する。超高速リフレッシュレートを生かして360度全ての映像を投影し、プロジェクターの映像を特定の位置からHOEスクリーン越しに見ることで、複数人同時かつ360度どの角度からでも3D映像を見ることができるディスプレイを実現した。
かなりの高速リフレッシュレートに驚くが、ブースの担当者によると、これはDLP素子ならではの高速応答性能を生かしたものという。これはもともと階調表現に使うためのもので、ライトフィールドディスプレイでは、この応答性能を階調描写ではなく3D映像の書き換えに利用したわけだ。そのため、投影している3D映像の階調性能は本来よりも劣るという。
映像の出力に使っていたのは米NVIDIAのGeforceRTXを搭載していたノートPC。360度分のバーチャルカメラを扱うためリアルタイム処理はかなりの高負荷になるようだが、デモではプリレンダリングした状態でプロジェクターに映像を渡すことで、ノートPCでも処理できる負荷に抑えてあった。
それぞれの角度で映像を出し分けられるので、例えば3Dオブジェクトは360度自由に、文字やロゴなどの2D要素は常に正面を向くよう制御することも可能だ。デモでは、バーチャルカメラが撮影するサッカー選手のユニフォームを角度ごとに変えて出力し、見る角度によってユニフォームの色が変化するようになっていた。
360度分の2D映像が用意できれば投影できる映像に制限はない。例えば、ボリュメトリックキャプチャした人物を投影したり、「Scaniverse」などの3Dスキャンアプリで作成した3Dモデルを映し出すこともできるという。ここは未確認だが、360度分の映像を用意できるのであれば実写を投影することも可能かもしれない。
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