「Suicaの処理速度は世界一ィィィ」と誰が言ったかは知らないが、反応速度は200ミリ秒、1分間に改札を最大60人通過可能なSuicaは、世界で最も利用者の多いとされる東京の新宿駅の朝夕の通勤ラッシュをさばくのに必要な仕組みだとされ、それ以外の方式を受け入れない一種の原理主義のような考えも生み出している。
だがJR東日本によれば「ウォークスルー改札においては都市部などのご利用の多い駅を想定しており、社会環境の変化に合わせ、ご高齢のお客さまや多くのお荷物をお持ちのお客さまがそのまま歩いて通過できることにより、よりシームレスな鉄道のご利用をしていただくことを考えております」(JR東日本広報)という。つまり、同社としてウォークスルー改札は「NEXT Suica」と呼べる新しい仕組みの位置付けだ。
仮にだが、1分間60人通過できるウォークスルー改札はどのように実現するのだろうか。同社によれば技術的な仕組みで現状確定したものはなく、今後検討を進めていくとしている。現状利用可能な技術、筆者が把握している現状の決済にかかわる企業らの内部事情から判断して、「UWB」がその鍵を握っていると考えている。
UWBは誤差数センチレベルと極めて正確な位置測定が可能で、iPhoneはほぼ全ての機種、Androidでもハイエンドを中心に多くの機種で採用が進んでおり、応用範囲が広がりつつある。
難点は動作にバッテリーが必要なことからスマートフォン利用が前提になるが、例えばポケットにスマートフォンを入れたまま改札を通過しようとしても、改札機に近づいたタイミングでUWBにより利用者の正確な位置を把握しはじめ、完全に通過するまでに入出場に必要な改札処理が改札機とスマートフォンの間で完結することで、ハンズフリーでの通過が可能になる。Suica改札のある程度の置き換えを想定していることからも、相応の処理能力を持たせることになるだろう。
一部で「顔認証」という報道もあったが、顔認証の実現には事前の登録作業が必要なことと、(利用者がずっと歩いて移動する)ウォークスルー改札での処理を実現するために顔認証にかかる“時間を稼ぐ”必要があり、一般的な解決策として改札レーンの距離を長くして対応することになると思われる。この場合設置場所が限られるため、あまり現実的ではないと筆者は考える。
もう一つ、JR東日本では「位置情報等を活用した改札」の導入についても言及している。
例えば無人駅など、現状でSuicaの簡易改札機があったり、あるいはそういった装置がないような駅であっても、スマートフォンなどの“位置情報”を活用して改札の入出場処理を行うというものだ。
プレスリリースの解説には通信衛星のイラストが描かれているため、「GPSを利用するのでは」との考えが広がっているが、JR東日本では技術的な仕組みなどについて現時点で言及しておらず、いまだ検討事項としている。
ただ、Suicaのような仕組みを今後も継続しようとしたとき、その対象エリアが(Suica改札機の導入にかかわらず)移動で利用されるようであれば、現状で「Suicaで入場すると対象駅ではない(あるいはエリア外)場合は窓口精算なしでは出られない」という状況の改善において、“Suicaアプリ”の導入されたスマートフォン内で料金精算を含むSuicaの入出場ができるようにしておくべきだろう。
この仕組みの実現にあたっては、先述のセンターサーバとスマートフォンの組み合わせで移動情報をリアルタイムで把握できることの恩威は大きい。
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