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思い出のVHSも見られない? “テープメディア終焉”の危機がせまる「2025年問題」を考える小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2024年12月26日 15時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

コンシューマー機器でできること

 VHSからのデジタル化は、動作するVHSデッキがあるかどうかが問題となる。ここで言う「デジタル化」とは、ファイル化するという意味である。すでにデッキがないという場合には、素直にダビングサービスへ依頼した方が早いだろう。

 ただ事業者へ依頼する場合、ダビングが可能なのはあくまでも個人の記録であって、テレビ番組を録画したものは、著作権の制限によって対応しないはずだ。テレビ番組の複製はあくまでも私的複製であるから可能なのであり、事業者が関与することができないからである。

 またいわゆるセルビデオとして購入したもので、コピーガードがかけられているものに関しては、個人でも複製することができない。これは技術的保護手段があるために、一般の機材では技術的に複製できないということもあるが、その技術的保護手段を回避することもまた、著作権法違反となる。

 動作するVHSがある場合は、デジタル化するのは意外に簡単だ。ゲーム画面等をキャプチャーするために、アナログビデオを録画するための機器がまだ結構存在するからだ。ネット配信や会議用で、USB Video Classのストリームがキャプチャーできる何らかの録画ツールをお持ちの場合は、アナログからUSBへの変換ケーブルを購入すれば良い。1000円ぐらいである。

 ゲーム配信用に、すでにHDMIが録画できる環境はあるという方もいるだろう。この場合は、アナログビデオをHDMIに変換するボックスを購入すればよい。

 PCで難しいことはできないという方は、アナログ入力に対応したキャプチャーボックスというのも売られている。アナログ映像をSDカードに記録してくれるもので、サンワダイレクトなどから製品が出ている。探してみるといろいろ類似製品も出てくるだろう。

サンワダイレクトが出しているPC不要のビデオキャプチャー「400-MEDI029」

 案外難しいのは、DVテープからのダビングだ。カメラに付属のアナログ出力ケーブルをお持ちの場合は、上記のVHSと同じ方法でキャプチャーできる。ただしHDVで撮影したものは、ハイビジョン画質にはならず、SD画質になる。

 そんなケーブル見当たらないという場合は、カメラ側の「i.LINK」端子を使ってデジタルキャプチャーする必要があるが、これの受け手側であるPCの方に、i.LINK端子や「IEEE 1394」端子がもうないだろう。昔のWindows PCにはこうしたデジタル端子があり、DVカメラからデジタル直結でキャプチャーできたものである。現在もIEEE 1394のインタフェースカードは売ってはいるようだが、それが動くPCがあるかどうか。

 一応IEEE 1394はAppleのFireWireと互換性があるのだが、そのFireWireも現在はMacには搭載されておらず、後継規格のThunderboltになってしまっている。デジタル化されたテープのほうがキャプチャーが難しいというのは、皮肉な話である。

IEEE 1394(i.LINK/FireWire)のケーブル

 HDVカメラがある場合は、おそらくHDMI端子も付いているだろう。ゲーム配信用にHDMIを録画できるキャプチャーボックスはたくさんあるので、それを使えばキャプチャーできるはずだ。

DVDも安心できない

 00年代初頭には、DVDに記録するカメラも流行った。「うちはディスクだから安心」と思われるかもしれないが、DVDやBlu-rayのレコーダーやドライブももはや風前のともしびである。JEITA(電子情報技術産業協会)が公開している民生用電子機器国内出荷統計によれば、Blu-rayプレーヤー/レコーダーは19年から前年割れし始めており、それ以降は前年比8割前後で減少を続けている。早ければ5年、遅くともあと10年程度でレガシーメディアの仲間入りとなるだろう。今動く機器があるうちに、デジタルデータ化しておくべきだ。

 同じ理由から、テープメディアからディスクメディアへダビングするのはナンセンスだ。また5年後に、今度はディスクからファイル化へと似たような作業を繰り返すことになる。

 ダビングサービスを利用する場合、テープからDVDなどのディスクメディアへダビングしてくれるケースが多いと思うが、この場合はDVD Videoフォーマットではなく、単純にデータとしてMP4などにしてもらった方がいいだろう。DVD Videoフォーマットにしてしまうと、再生にはDVDプレーヤーが必要になるし、PCへのデータ取り込みも、昔懐かしの「リッピングソフト」をもう一度探す羽目になる。

 データ化したら、それは大手クラウドストレージサービス2つぐらいにアップロードしておくことを提案したい。頑張って自分でHDDなどに保存するという方もいらっしゃると思うが、どこかにやった、壊れて読み出せない、インタフェースが合わなくなった、間違えてフォーマットしたといったことが起こりうる。

 保存が終了するのは、あなたの寿命が尽きるまでだ。それを考えれば、自分よりも寿命よりも長く生き残りそうな企業のクラウドに預けた方が安全である。仮にクラウドサービスが終了することになっても、突然アクセスできなくなるということはないだろう。多くの場合は事前にサービス停止がアナウンスされ、移行期間が設定されるはずだ。

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