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約1200年前のミイラにレーザー照射→「古代の芸術的タトゥー」発見 現代の針よりも細い高度な技術Innovative Tech

» 2025年01月29日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

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 中国の香港中文大学などに所属する研究者らが発表した論文「Hidden artistic complexity of Peru’s Chancay culture discovered in tattoos by laser-stimulated fluorescence」は、ペルーの古代文明チャンカイ文化において、これまで知られていなかった高度な芸術性をもつタトゥーが最新の科学技術により明らかになった。

今回発見されたチャンカイ文化のタトゥー

 研究チームは、レーザーを使った手法「Laser-stimulated fluorescence」(LSF)を用いて、約1200年前のミイラ化された人体に施されたタトゥーを詳細に調査した。この文化は、現在のペルー中部沿岸地域で紀元900〜1533年まで栄え、後にインカ帝国に吸収された小国家である。

 レーザー蛍光法は、皮膚を蛍光させることで黒いタトゥーインクの下から鮮明な画像を得る技術である。これにより、時間経過で生じるインクのにじみを排除し、当時施術された際の正確な線や模様を把握することが可能となった。

 驚くべきことに、発見されたタトゥーの線の細さは0.1〜0.2mmであり、これは現代の標準的なタトゥー針(0.35mm)よりもはるかに細い。研究者たちは、この精巧な施術にサボテンの針やとがらせた動物の骨が使われた可能性が高いと推測している。

さまざまなチャンカイ文化のタトゥー

 調査対象となった100体以上のミイラのうち、このような精密なタトゥーが確認できたのはごく一部であった。大多数のタトゥーは、輪郭が不明確な単純な形状であったことから、高度な技術を持つ施術者は限られていたと考えられる。

 発見された精巧なタトゥーには、幾何学的な模様や動物をモチーフにした図案が含まれており、これらは同時代の土器や織物、岩面画に見られる芸術表現よりも複雑で繊細なものであった。

チャンカイ文化の芸術と場所

Source and Image Credits: T.G. Kaye, J. Bak, H.W. Marcelo, M. Pittman, Hidden artistic complexity of Peru’s Chancay culture discovered in tattoos by laser-stimulated fluorescence, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 122(4)e2421517122, https://doi.org/10.1073/pnas.2421517122(2025).



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