米Amazon傘下のAmazon Web Services(AWS)は2月27日(現地時間)、新しい量子コンピューティングチップ「Ocelot」(オセロット)を発表した。エラー訂正のコストを、従来の表面符号を用いた量子エラー訂正と比較して最大90%削減できるとしている。
Ocelotは、カリフォルニア工科大学のAWS量子コンピューティングセンターの研究チームが開発した。従来型のコンピュータでは解決できない商業的・科学的に重要な問題を解決できる、耐故障性量子コンピュータ構築に向けた重要な一歩となるとしている。
Ocelotでは、重ね合わせ状態を利用することで、特定のエラーを抑制する効果のある「ネコ量子ビット(cat qubit)」を採用した。エラー訂正を最初から組み込み、特定の形式のエラーを抑制し、量子エラー訂正に必要なリソースを削減する。ちなみにOcelotというのは中南米に生息する野生のネコ科動物の名称だ。
Ocelotの大きな特徴として、量子ビット数を増やすのではなく、振動子のエネルギーを増加させることで、エラー訂正を効率化する点が挙げられる。振動子のエネルギーを増加させることで、ビットフリップエラーに対する耐性が向上し、より少ない量子ビット数でエラー訂正が可能になる。このアプローチにより、量子コンピュータに必要なリソースを最大10分の1に削減できるという。
また、ビットフリップエラーに対する本質的な保護を備えており、位相フリップエラーは反復符号を用いて訂正される。さらに、ノイズバイアス制御NOT(C-NOT)ゲートを使用することで、エラー検出を行いながらビットフリップ保護を維持する。
AWSは、Ocelotはまだプロトタイプであり、量子研究への投資とアプローチの改良を継続することにコミットしていると語った。
同社は2019年に量子コンピュータのフルマネージドサービス「Amazon Braket」を発表し、科学者、開発者、学生が、さまざまなサードパーティの量子コンピューティングハードウェア、高性能シミュレーター、量子コンピューティングを試せるソフトウェアツールスイートを使用できるようにしている。Amazon Braketを通じて、Ocelotの研究開発を支援していく。
量子コンピューティングチップに関しては、米Googleが昨年12月に「Willow」を、米Microsoftがこの2月に「Majorana 1」を発表している。
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