核心に触れる前に、クレジットカードの仕組みを知る必要がある。クレジットカードを発行するカード会社は「イシュア(Issuer)」、クレジットカードを受け入れる店舗は「加盟店(Merchant)」、この加盟店を営業開拓し、そこから流れてくるカードを処理してイシュアへと流す役割を果たすのが「アクワイアラ(Acquirer)」とそれぞれ呼ばれている。
利用者はカード会社から発行されたクレジットカードを加盟店で使うことで買い物が可能で、精算日に支払われた利用料金はイシュアやアクワイアラを介して購入代金のうち、インターチェンジフィーや決済手数料といったそれぞれの事業者の取り分が引かれたうえで加盟店へと支払いが行われる。
「VisaやMastercardのブランドはどこに絡むの?」という話だが、例えばVisaのカードで決済を行った場合、アクワイアラはVisaのネットワークを通してイシュアへと与信枠の問い合わせや実際の請求処理を行うことになる。こうすることでアクワイアラは世界中に数多存在するすべてのイシュアと契約を結ぶことなく、Visaを介して取引が可能になるというメリットがある。
そして今回、もう1つ重要となるのが「決済代行業者(PSP:Payment Service Provider)」の存在だ。加盟店はアクワイアラと直に契約を行う場合があるが、こうすることでより細かい手数料率の交渉が可能になったりする。
ただし、手数料を極限まで引き下げるには主に自身の店舗で利用される主要なカード会社を網羅した契約が必要であり、こうした交渉が可能なのは取引件数の多い大手小売店やチェーンに限られる。多くの場合、より簡易に決済サービスを導入したいと考えるため、中小の加盟店はこうした契約を一括して処理するPSPを利用することになる。
そのため、今回お題目に上がっているような「アダルトコンテンツを扱っており、取引停止を通告されるようなサービス事業者」は、ほぼPSP経由でクレジットカードを導入していると考えていいだろう。
このため、今回話題になっているクレジットカード取引の停止はPSP経由で通知されることが多い。事前に規制キーワードリストが送られてくるケースも、PSP経由ということになる。
ただ、24年12月29日に東京の有明で開催された「表現の自由を守る会フォーラム」では前述の山田議員のほか、赤松健参議院議員らが登壇していたが、そこで触れられていたのは「PSPからだけでなく、アクワイアラというケースもあり、必ずしもどこが原因かを特定できない」という点だった。
最終的に国内で契約可能なPSPが見つからなかったため、海外のPSPと契約したら問題なかったというケースもあるが、他方で前述のような理由で手数料交渉が行えず、日本国内の他業者と比べても非常に高い手数料を受け入れざるを得なかったという。
ヒアリングするなかで共通しているのは、以前までは問題なかったものの、“取引先からの圧力”によりPSPがアダルトコンテンツ事業者の取り扱いを終了せざるを得ないというケースで、取引上の“上流”にいる誰かしらが表現規制に至る圧力をかけているのは間違いないようだ。
そうなると真っ先に疑われるのはVisaのような国際ブランドということになるが、山田議員は「Visaと事前交渉をして話し合いをしたからというわけではないが、Visaがうそを言っているようには思えない」とコメントしている。
Visaはサービス運用にあたってルールを明確に定義しており、アダルトコンテンツについての言及も行われている。正確には「アダルト」ではなく、CSAMと呼ばれる「児童虐待」などにまつわるコンテンツに関するものだが、下にあるようなものが明確に確認できない限り、Visaとして具体的なアクションは起こさないという判断だ。
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