そんなおり、長い間もめていたBlu-rayに対する補償金が、この4月から徴収されることとなった。1台あたり税込200円、消費者が負担することになる。ディスクは定価の1%で計算する。
200円ぐらいいいよと思うのか、この終わりそうな文化に対して今頃何言ってんだと思うのか、反応はさまざまだろう。だがこの補償金は、消費者には何の利便性ももたらさない。
筆者は15年から19年まで、文化庁文化審議会著作権分科会の「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」(録録小委)で専門委員を務めていた。このBlu-rayに対する補償金をどうするのか、検討する委員会である。
このとき主張したのが、「DVD・Blu-rayの著作権保護技術であるCPRMは、今後必ず大きな問題となる。ゆえにDVD・Blu-rayメディアから再ダビングを許容できるようにするならば、新しい対価還元はあり得るのではないか」というものだった。つまりディスクメディアからコンテンツを取り出して保存を続けることが許されるのであれば、お金を払うこともやぶさかではない、という話である。
だが結果的にこの主張は受け入れられず、話は平行線のまま録録小委は解散となり、それ以降は非公開の省庁間協議となった。そして消費者に何のメリットもない補償金だけが追加され、これからディスクのCPRMが問題になっていく。19年時点で筆者が予測していた最悪のシナリオは、思ったよりも早く現実のものになろうとしている。
もう録録小委のような委員会が設置される見込みはないが、ディスクメディアが読めなくなる前に中身を取り出させろという消費者の強い意見は出てくるだろうか。あるいはもうネットが肩代わりするからいいか、ということになるのだろうか。
現在TikTokなどでタレント名を検索すると、テレビ番組からの切り取りと思われるコンテンツが大量に見つかる。画質が良くないのでどうやって切り取ったのか判断できないが、DRMを回避したのなら 著作権違反だし、そもそも無許可でネットに掲載するのも著作権違反だ。これがほぼ放置状態にある。
こうした違法コンテンツがあるからもう自分で録画したものはいらないよね、という流れになるならば、それは社会的に不健全であり、不安定だ。それならば、私的複製に限定したDRMの回避を合法化するほうがよほど健全である。
日本のコンテンツをそのままの形で世界に通用させたのは、オタク文化の功績である。その推し活を支えるディスクメディアの消滅によって、世界に通用する日本のコンテンツの大事な柱を失うことになりかねない。
これは著作権者にとっても、小さくない話のはずだ。
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