SNSに詳しい国際大の山口真一准教授(社会情報学)は、「ブルースカイとXは、投稿形式やユーザーインタフェースといった機能面では大きな違いはない」と前置きした上で、Xからブルースカイに移行する場合、過去のXでの投稿を生かせなくなり、新たなつながりを構築する必要もあるなど「一般のユーザーにとってはスイッチングコストが高い(移行の負担が大きい)」と指摘する。また、利用者が増えるほどサービスの価値が高まるネットワーク効果もXの方が強く働くため、「多くの人がXに残った」と分析している。
山口准教授によると、これまでXなどの巨大プラットフォーム上では、異なる意見を持つ複数のエコーチェンバーが存在し、交流が少なかった一方で、相互に可視化はされていた。これに対し、ブルースカイなど新しいSNSに特定の意見の人が多く移ったことで、「異なる意見を持つ人との交流が完全になくなり、断絶が起きている」と指摘する。
党派性の強いSNSとしては、トランプ氏が創設した「トゥルース・ソーシャル」が有名だ。21年の米連邦議会議事堂襲撃事件を受け、トランプ氏のTwitter(現X)アカウントが永久凍結(当時)されたことをきっかけにサービスが開設された。こうした経緯から、トランプ氏の支持者を中心に保守派のユーザーがXから移行。異なる考えや意見に触れにくい言論空間「フィルターバブル」の顕著な例とされる。
しかし今度は、進歩的なユーザーがXからブルースカイに流れ、新たなフィルターバブルを形成している。
キューバン氏は9日、ワシントン・ポストの記事を引用したブルースカイへの投稿で「(ブルースカイでは)思考の多様性の欠如が、使用率を著しく低下させている」と指摘。これに対し、約3300件の返信と1100件の引用リポスト(再投稿)が寄せられ、多くが批判的な内容だった。中には「ファシストと話したいならXへ行け」「(Xで)ナチスとその支援者たちの言うことを聞く必要があるか」など誹謗(ひぼう)中傷のような言葉も並んだ。
進歩的な左派がXから離脱する現象について、米メディアの間では、左派にとっても右派にとっても利益にならない──との見方が出ている。
米ニュースサイト「ポリティコ」は、Xからブルースカイへの移行が盛んだった24年11月に「民主党はXで存亡の危機に直面」と題した記事を掲載。その中で、匿名の民主党のコミュニケーション専門家のコメントとして「マスク氏が気に入らないという理由でXを離脱するのは、そもそも民主党をこの窮地に陥れた純粋主義的な政治そのものだ」「エコーチェンバーは、彼らが代表すると主張する労働者階級の苦悩よりも、代名詞の教義を重視する政党を生み出した」と伝え、民主党を取り巻く言論環境を憂慮した。
一方、米誌アトランティック電子版は同月、Xの左派ユーザーがブルースカイへ移行することは右派にとって問題だとする論考を掲載。「右派はXにリベラルなユーザーを必要としている」「考えをメインストリーム(一般)に訴える機会を求めている」と指摘した。
ピュー・リサーチ・センターの調査によると、同機関が定義するニュースインフルエンサーは、政治的な立場を問わず、Xには83%が平均週4日以上投稿した一方、ブルースカイは31%にとどまった。第2次トランプ政権発足後もXは言論空間としての地位を保っているが、ブルースカイでニュースインフルエンサーの活動は低調だ。
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