果たして2025大阪・関西万博は未来を感じることができたのでしょうか。結論からいうとそこに未来はありませんでした。AIやロボットなどテクノロジー系のものは、ネットで見聞きする情報の方がはるか先を行っており、今更感だけが積み重なっていきました。
詳細は後述しますが、万博会場内外周バス(eMover)の自動運転もドライバーが監視するレベル2による運行で、相当がっかりしました。新大阪などと会場を結び一般道を走る自動運転バスが、レベル2運行になるのは理解できますが、一般車両のいない外周道路を走るeMoverこそは、無人走行を実現して欲しかった、というのが正直な気持ちです。
もしかしたら、落合陽一氏がプロデュースしたパビリオン「null2」には「未来」があったのかもしれませんが、人気パビリオンだけに予約もとれず当日受付も不可で、心残りです。
その一方で未来をのぞかせてくれた展示もありました。PASONA NATUREVERSE(パソナ館)のiPS心臓です。2センチ程度のミニ心臓でしたがドクドクと脈打っていました。その可能性がもたらす未来は、いのち輝いていました。
筆者としては、未来よりも「過去」に興味対象が向いたということもあります。なかでも、イタリアパビリオンの国宝級展示で満足度が爆上がりでした。2世紀に作られた大理石の彫刻像「ファルネーゼのアトラス」、レオナルド・ダ・ヴィンチの直筆スケッチ、バチカンパビリオン(イタリア館内)の「キリストの埋葬」は、その存在自身が解き放つオーラやエネルギーがその場の空気を支配しており、圧倒されると同時に見応え十分でした。
というわけで、未来を感じることはできませんでしたが、大阪・関西万博は、総じて満足することができました。昼間は好天でしたが、夕刻突然の風雨に見舞われシンボルである大屋根リングは雨宿りにちょうど良い具合でした。ずいぶんとお高い雨よけですが...。
筆者ががっかりした自動運転バスについてレポートします。eMoverは、4つの停留所を巡りながら外周を走るEVバスです。ほとんどの便はドライバーによる手動運転ですが、1時間に3本、自動運転車両が運行されています。ただ、自動運転車両だけは、始点から終点までノンストップで走ります。脇道レーンに入って乗降位置に駐める必要のある停留所での自動運転を回避するための措置だと思われます。
事実、終点の停留所では、乗降位置に駐める際には自動運転をオフにしてドライバーが手動で運転していました。車両はLiDAR、カメラなどのセンサー類による自動運転を実施しています。技術的には無人の運行が可能なのかもしれませんが、安全の上に安全を重ね、念には念を入れてレベル2による運行を行っているのでしょう。
クスっと笑った場面もありました。下記の動画にしっかりと記録されていますが、道中、足の部分だけ道にはみ出す形で、スタッフが腰掛けていました。てっきりバスが自動で避けるものかと思っていたのですが、手前で最徐行したかと思うと、ドライバーがそのスタッフに対し、足を引っ込めるように手で合図を送っていました。
繰り返しになりますが、外周道路は一般車両がおらず、他には業務車両や要人のリムジンが通行するだけで、ほぼ、eMoverの専用道路です。であるからこそ、米Waymoや中国企業が実施している無人による自動運転を実現して、日本の技術力を世界にアピールして欲しかったというのが正直な気持ちです。ちなみに、万博駐車場と会場を結ぶシャトルバスは一部でドライバーの監視付でレベル4運行していたそうです。
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