夏といえばホラー! ということで、今回ボクが見てきたのは8月8日公開のホラー映画「近畿地方のある場所について」です。昨年見た「変な家」はYouTube発でしたが、今回はWeb小説サイト「カクヨム」に投稿された、背筋さんによるホラー小説が原作です。
原作小説は、様々な怪事件や未解決事件に関する記事やネット上の情報等を実際に読み進めていく、いわゆるモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)形式になっています。一見、関係のなさそうなそれらの情報は“近畿地方のある場所”に関わっていることが分かってくるのですが、この調査をしていた雑誌編集者が失踪してしまいます。彼はどこに行ったのか、そしてこの怪異の真相とは……? 実際に起こったことではないかと錯覚さえさせるその内容が反響を呼び、累計2300万PVを超えるヒットとなりました。
ボクも読みましたが、ネット上の情報を実際にPCで見るという体験は想像以上にリアリティーがあり、読んでる最中は背筋がゾクゾクして思わず後ろを振り返ったものです。ただ、肝心の怪異の真相について、あまりうまく整理されていない印象を受け、個人的には肩透かしを食った気がしました。
一方の映画版ですが、結論から書くとボクはかなり好印象でした。原作ではネット上の情報としてまとめられた様々な怪事件が、今回の映画ではテレビ番組やホームビデオの映像としてまとめられています。視覚的に整理されているので見やすいのはモチロン、映像自体も実際にありそうな内容かつ不気味なものも多く、モキュメンタリーとして原作に負けず劣らずのリアリティーを生み出していると思います。
そして個人的に一番感心したのが、怪異の真相が、カクヨム版を基にかなり分かりやすく整理されていたことです。結果的に原作とは少し違う内容にはなっているものの、カクヨム版の内容に新たな解釈を加え再構築したその内容は、それ自体に賛否両論あるかとは思いますが、原作を補完するという意味では必見の物になっていると思います。原作ファンの人には、食わず嫌いせずに是非見てほしいですね。
新たな解釈……というと、7月25日に発売された文庫本版もオススメです。こちらは登場人物や内容がかなり変わっています。カクヨム版や映画版のようなホラー要素は若干薄めになっていますが、内容的には一番まとまっていて、物語としての読み応えは一番あるなと感じました。新たな登場人物たちと怪異との因縁を読み解くことで、さらに真相について詳しく理解することができると思います。
本作は、作品自体もバラバラだった情報が真相に繋がっていくという複雑な構造になっている上に、映画版や文庫本版といったメディアミックス作品に触れることでさらに理解度が増していくという、パズルのような作品だと感じました。他にも単行本化やコミック化もされているので、個人的にはこれらも全部チェックしてみたいなと思っています……って、最初は映画だけのつもりだったのに……もしかしてボクもこの作品の怪異に取り込まれてます?
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