IBC(International Broadcasting Convention)は、例年9月にオランダ・アムステルダムで開催される放送機器展だ。NABが米国向けソリューションが中心であるのに対し、IBCはヨーロッパ向けソリューションが中心となる。
以前は日米とヨーロッパでは放送フォーマットの違いにより、IBCは日本からはあまり注目されていなかった。しかしIPの時代になり、ヨーロッパがIPで先行し始めてからは、俄然注目されるようになっている。
今回は各メーカーがIBC2025向けに発表したプレスリリースを中心に、日本でも導入の可能性があるIP・IT・DX関連のニュースをまとめてみたい。
ソニーが今年7月に発表したXDCAMメモリーカムコーダー「PXW-Z300」は、2024年に発売された「PXW-Z200」の上位モデルとなる。Z200での不満点が解消されたモデルとして注目を集めているところだが、IBC2025向けに公開されたプレスリリースでは、IP・DXとしては意外な世界初のポイントがある。
それはカムコーダとしては世界で初めて、C2PAに対応したことだ。C2PAは、「Content Credentials」(以下CC)と言われる来歴情報を署名付きで追加する仕組みの標準化を行う団体で、ソニーも名を連ねている。これまでデジタルカメラにおいて、静止画へのCC情報組み込みが進められてきたが、PXW-Z300は動画クリップに対してCC情報を組み込める、初めてのカメラということになる。
加えて同社のクラウドサービス「Ci Media Cloud」では、CC情報のプレビュー機能が追加される。PXW-Z300からクラウドへ伝送されたクリップのCC情報を確認できるという連携だ。
海外で展開している「Media Backbone Hive」は、マルチプラットフォーム型報道支援システムで、インジェスト、アセットマネージメント、編集、送出といった機能を持つが、これも最新バージョンでC2PAに対応する。Media Backbone Hiveは編集システムとしてPremiere ProおよびDavinci Resolveに対応しているが、トータルソリューションとして考えれば、おそらく両ソフトもCC情報の読み取りおよび書き込みに対応すると思われる。元々CCはAdobeが中心となって推進してきた経緯もあり、少なくともPremiere Proの対応は確実だろう。
スイッチャーの老舗米GrassValleyは、昨今多くの製品をソフトウェア化し、「AMPP」というシステムソリューションにまとめている。もちろんその前提には映像のIP化があるわけだが、IBC2025では、従来のベースバンドからIPへの橋渡しをするためのハードウェアが出展された。
ACE-3901カードは、1カードあたり最大32×12G-SDIまたは64×3G-SDIとST2110の相互変換をソフトウェアベースで変換し、400Gb/sのネットワークへ接続する。4RUフレームあたり最大192のSDI→IPとIP→SDIの双方向入出力をサポートするため、大幅なラックスペースの削減が期待できる。
またIBC2025で初公開された「MV-1200-RTR」は、6RUの12G-SDIルーターだが、マルチビューアとしても機能する。最大160×160 I/Oまで拡張可能で、内蔵マルチビューアエンジンにより最大16画面の表示と、1画面あたり512個のPiPをサポートする。さらにフレーム同期機能、MADIオーディオオプション、ダイレクト接続ハードウェアコントロールパネルを備えている。OBバンや、eスポーツアリーナなどの使用を想定している。
従来製品としては1RUのMV-1200シリーズがあったが、それを大幅に拡張したモデルのようだ。IP伝送の場合、伝送途中でのモニタリングは喫緊の課題だが、大規模ルーターとマルチビューアを一体化することで省スペース化を図ろうというものだ。
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