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破天荒アニメが“教材”に? 「邪神ちゃん×大学」の異色コラボにみる、中堅IPの生存戦略まつもとあつしの「アニメノミライ」(2/4 ページ)

» 2025年12月17日 11時00分 公開

「邪神ちゃん」である必然性と、情報教育的な「勝算」

──とはいえ、題材はあの『邪神ちゃん』です。情報リテラシー教育で「ルールを守ろう」と教えるのに、最もルールを守らないキャラクターを起用するのはリスクがありませんか?

柳瀬:ある意味で適切、ある意味で不適切ですよね(笑)。

©ユキヲ・COMICメテオ/邪神ちゃんドロップキック製作委員会

 アニメ業界の中ではかなりSNSを使い倒している作品なのでSNSリテラシーを語る上では「適切」ですが、キャラクターの素行を見れば明らかに「不適切」です。あの子SNSで煽られると悔しくて現実世界で発信者を襲撃しますからね。

 普通なら「こんなやつから何を学ぶんだ」となります。

伊藤:情報教育の視点から言うと、まさにそこが狙い目でした。従来の「正攻法」の教材──つまり「こういうことは危険だからやめましょう」と正論を説くような動画は、生徒が見てくれないんです。面白くないし、説教臭いですから。

 そこで目をつけたのが、『邪神ちゃん』の「フォーマット」です。

──フォーマット、ですか

伊藤:はい。この作品は基本的に「邪神ちゃんが調子に乗って何かをやらかし、ゆりね(同居人の女子大生)が『そうじゃないでしょ』と制裁(ツッコミ)を加える」という様式美で成立しています。

 この構造が、教育における「メタ認知」のプロセスと非常に相性が良いんです。視聴者は、邪神ちゃんの失敗を見て「あ、これはダメなんだ」と客観的に気付き、ゆりねの指摘で理解を深める。

 自然と自分を客観視するメタ認知が働き、これまでの行動を振り返って「次から気をつけよう」という行動変容が促されるのではないかと考えています。

 試しに自分で脚本を書いてみたのですが、キャラクターを無理に更生させることなく、いつものノリのままで教材として成立しました。

柳瀬:いわゆる「ゆっくり解説」のような、定型の強さですね。台本を伊藤先生が書かれたのですが、原作者のユキヲ先生も一発OKを出すほどの完成度でした。「不適切」なキャラクター性は、このフォーマットの力で「適切」な学びに変換できたと考えています。

伊藤先生イチオシの1本:学生への調査や出張授業を行う中で、生徒だけでなく先生方までもが「非公開アカウントにしておけば安全」と思い込んでいるケースが多いと感じていたため。実際には、非公開アカウントの画面がスクリーンショット(スクショ)で撮られて流出し、そこから炎上するケースが多発している。その「現実」をどうしてもこの教材で伝えたかった、という
柳瀬Pイチオシの1本:柳瀬氏自身、神保町に行くとつい「神保町なう」と投稿してしまい、その直後にファンに待ち伏せされる(会ってしまう)という経験があったため。「自分(おじさん)は会っても構わないが、メークをしていない声優さんなどが同じことをすると危険」

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