すでにAIは社会に受け入れられたと考えていいと思うが、それは社会人だけが関係するわけではない。当然学生たちもAIが使える立場にある。
義務教育以降では学習内容も高度になり、学生たちは当然苦労する。その苦労をAIを使って何とか…と考えるのは当然であろう。実際学生たちはどのようにAIを使い、またそのことに関してどのような意識でいるのか。
そうしたことを調査・研究したのが、仙台大学AI教育研究チームである。今年10月、「学生と教員を対象とした生成AIの教育利用状況と意識に関する全国調査 2024年−2025年比較調査」という報告書が公開された。
2024年と25年の調査であり、まだ1年間しか違いがないが、AIの発展スピードに対して利用者の意識がついていけるのかという点でも興味深い調査である。今回はこの調査をもとに、特に差分が大きい部分にフォーカスしながら、AIと高度な教育の関係はどうあるべきなのかを考えてみたい。
この調査の対象となっているのは、15歳(高校生相当)以上の学生と、小中高校、専修学校、専門学校、大学、大学院、各種学校の教員である。有効回答数としては、24年が教員2616人、学生4323人、25年が教員2506人、学生4725人となっている。
まず学生のAIの利用状況だが、24年は高校生と大学生以上ではそれほど差がなくどちらも3割程度だったが、25年は大学生以上ではほぼ倍に増え、全体の3分の2が利用している。高校生も約半分が利用しているという結果になっている。この1年で利用率が急増しているのが分かる。
利用サービス別に見てみると、「ChatGPT」無料版の利用が群を抜いている。やはり知名度があり、無料範囲でも結構使い出があるということだろう。「Google Gemini」の増加は、スマートフォンからの利用だろうと考えられる。逆に「Microsoft Copilot」の利用が伸びていないのは、PCユーザーの少なさに起因するものと考えられる。
「教育・学習における可能性が広がると思う」という設問に対しては、教員、学生ともに肯定的な意見は多いが、その内訳として「とてもそう思う」が減少し、そのぶんが「どちらかといえばそう思う」の方に移行したように見える。AIに対する過剰な信仰ともいえる状況が減少し、冷静に見始めているように思える。
一方で、利用に関する不安はどうだろうか。学習活動がAIに依存してしまうことに関しては、24年には依存への不安を感じていた学生が過半数を占めていたが、1年が経過して不安は大幅に減少していることが分かる。この傾向は教員には特に顕著で、学生以上に不安が払拭された様子が分かる。
逆に不安感が増加した点として、AIを使ってカンニングしてしまうことに対する不安はやや拡大傾向にある。良くないことであると自覚的になったということかもしれない。
ただ課題・レポート作成にAIを使うことに関しては、それが不正と見なされる不安はかなり高いままで維持されている。課題・レポートは学校外で行うものであることから、AIの利用は学校が管理しない、自己責任となる。高校・大学側ではガイドラインは示しているものの、どういう使い方ならいいのか、利用の中身の問題が解決していない。
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