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「ディスプレイ付き室内扉」「ワニ革張り扉」で海外富裕層を攻略 とあるドア専門メーカーの挑戦ニッチ企業でもできる!IT活用で海外進出

» 2025年12月26日 15時00分 公開
[本村丹努琉ITmedia]

 世界でも高い技術力を持つことで知られる日本企業。ニッチ分野で目立たないものの、高い技術や世界シェアを持つ企業は少なくない。ドイツの経営思想家のハーマン・サイモン氏はこうした企業を「隠れたチャンピオン」と定義し、経済産業省も「グローバルニッチトップ企業」として支援している。

 グローバルニッチは高い技術力を持つ一方で、知名度が実力に比べて劣り、ITを駆使して海外でのブランディングや販売に生かしていることも多い。この連載では、こうした企業のIT戦略をインタビューで深堀りする。

 第8回は室内ドア専門メーカーのKAMIYA(神奈川県伊勢原市)を取り上げる。同社は液晶ディスプレイを搭載した室内ドアなど希少性や付加価値の高い製品を武器に、中東や欧州の富裕層を開拓している。同社の神谷忠重社長は海外進出にあたって「顧客のターゲットを決めて、提供するプロダクトを限定するのは一丁目一番地だ」と話す。聞き手は、海外進出する中小企業のブランディング支援などを手掛けるZenkenの本村丹努琉(もとむら・たつる)。

photo 神谷忠重社長

「ディスプレイ付き」「ワニ革張り」……富裕層向けドアで海外攻略

──KAMIYAは室内ドアの製造などを手掛けています。会社の概要を教えてください

神谷社長:当社は国内では少ない室内ドアの専門メーカーです。1942年に横浜市で創業した際は木製の家具、調度品などを製造していました。その後、大手ハウスメーカーなどの仕事をOEM(相手先ブランドでの生産)で引き受けるようになりました。

 しかし、強い企業になるには大量生産のOEMではなく、付加価値の高い商品を生産・販売することが必要だと考えました。このため、05年に天井まで高さのある「フルハイトドア」のブランドを立ち上げました。InstagramなどSNSでフルハイトドアが注目されたこともあり、業績は徐々に拡大。現在は伊勢原市に本社を構え、約170人の従業員を抱えています。

──室内ドアの専業の会社は珍しいように思います。具体的な事業の強みを教えてください

神谷社長:住宅などを建設する工務店に室内ドアを直接販売することです。他のメーカーは多くの卸売業者が入り、中間マージンが発生します。当社は直販することでコストを4分の1程度削れるため、製品をより安くエンドユーザーに届けることができます。

 また、当社は専門メーカーのため、33種類の室内ドアを生産しています。例えば空間を広く見せるために全面がミラーになっているドアや額がついていて絵画を飾れるドア、室内自動ドアなどユーザーのさまざまなニーズに応えられます。

──KAMIYAは販路のさらなる開拓に向けて海外進出を目指しています

神谷社長:本格に海外進出したのは19年です。イタリアのミラノやアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された建材の世界見本市に出展しました。20年に新型コロナウイルスの感染拡大で海外進出のプロジェクトを休止せざるを得ませんでしたが、24年になってドバイの世界見本市に再び出展しました。

──海外進出に当たっての戦略は

神谷社長:例えばITを活用した付加価値の高い室内ドアの開発による海外需要の開拓を進めています。液晶ディスプレイを搭載した室内ドア「MILAOS」(ミラオス)はその1つです。ドアの一部に液晶ディスプレイが入っており、NetflixやYouTubeなど動画配信サービスを楽しめます。Bluetoothで接続すれば、スマホの情報をミラオスの大画面で見ることもできます。

photo KAMIYAは高付加価値のドアを海外に売り込む戦略を取っている

 ドバイなど超富裕層の多い海外では、こうした付加価値の高い室内ドアの需要が多い傾向にあり、海外進出の足掛かりとなると考えています。ほかにも金箔を張り詰めたドアやクロコダイルの革張りのドアなど、付加価値の高い製品を製造し、海外展示会でもアピールしました。こうした製品の値段は50万円超、製品によっては1000万円を超えるものもありますが、海外の卸売業やハウスメーカー、個人の富裕層などからすでに20件ほどの問い合わせがあります。

──海外進出をする日本の建設会社では、長さの単位など建築基準や製品の規格が違うことから苦戦している企業も少なくありません

神谷社長:当社の場合、海外では富裕層向けの室内ドアにターゲットを絞っているため、対応するのはそれほど難しくありません。

──自社の製品の販売対象を絞るのも、ニッチ企業が海外市場で成功するカギになるのでしょうか

神谷社長:顧客のターゲットを決めて提供するプロダクトを限定するのはビジネスの“一丁目一番地”だと思います。当社の場合、05年以降、研修として社員をイタリアやドイツの世界見本市に定期的に参加させ、欧州の消費者が欲しい製品を研究してきました。見本市では照明や展示の仕方も勉強になります。そうした努力の末にどんな製品に需要があるかを研究し、海外で販売するターゲットを絞っています。

──需要動向を把握し、ターゲットを明確にして製品を販売するのは重要ですが、実践できている企業は必ずしも多くないように思います。今後の海外進出の展望を教えてください

神谷社長:海外では今後、ドバイなどに無人ショールームを出店する計画があります。20〜30坪のショールーム内には大型のディスプレイを置き、AIを使ったアバターが室内を案内する仕組みです。国内ではすでに複数の無人ショールームを展開しています。AIを活用すれば、海外の無人のショールームでも、多様な言語で当社の製品を説明することができます。AIなどの新たな技術は人手不足を補い、人件費などのコストも抑制できます。

photo アバターを使った無人ショールームを海外でも展開

──無人ショールームを出店した場合、その存在をどのようにして海外の方に知ってもらうのですか

神谷社長:国によって違います。例えばドバイのような場所では、日本の大手商社などに協力してもらい、王族や富裕層などに知ってもらえるようにしようと考えています。欧州などでは現地の言葉でつくったWebサイトなどによる情報発信が有効だと考えています。

著者プロフィール:本村丹努琉 Zenken取締役

通信機器販売やエネルギーコンサルティングなどのベンチャー企業3社で営業責任者として組織構築に従事。1人のカリスマだけに頼らない組織営業スタイルを確立し、収益増に貢献した。2009年に全研本社株式会社(現:Zenken株式会社)に入社し、ウェブマーケティングを担当する「バリューイノベーション事業部」(現:グローバルニッチトップ事業本部)の立ち上げに参画。コンテンツマーケティング黎明期から、オウンドメディアを基軸とした WEBブランディングを提唱し、14年間で約8000社のインサイドセールスを構築した。

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