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都会のたぬきは人間がいるとき、うんちを我慢しているかもしれない 東京農工大

» 2026年01月09日 18時01分 公開
[ITmedia]

 都会のたぬきは、人間がいる場所や時間帯では排せつを我慢しているかもしれない──東京農工大学は1月9日、こんな可能性を示唆する調査結果を発表した。同大によれば「都市において、野生動物の匂いによる個体間コミュニケーションがどのように維持されているのか理解する上で重要な一歩」という。

photo 共同トイレを訪れるたぬき(ニュースリリースから引用)

 たぬきは一般的に、複数匹が同じ場所(共同トイレ)で排せつする習性を持つ。また食事の際には、周囲からの見通しが悪い場所を選んだり、夜間に行動したりと人間を避けるような振る舞いを見せる。今回の調査では、人間の活動がたぬきの排せつ時間に与える影響を、共同トイレへの訪問パターンを調べることで検証した。

 検証は国際基督教大学キャンパス、東京都立農業高等学校神代農場、東京農工大学府中キャンパスの3カ所で実施した。計8カ所の共同トイレを、2018年〜19年の2年間にわたって観察。共同トイレへの訪問を計3259回記録した。

 結果、訪問の9割以上が夜間に集中していることが分かった。ピークは場所によって異なり、国際基督教大学キャンパスでは日没直後、他の2つでは日没直後か夜明け直前、もしくは夜明け前だった。

photo 3つの調査地(A:国際基督教大学キャンパス、B:東京都立農業高等学校神代農場、C:東京農工大学府中キャンパス)での年間のタヌキの共同トイレへの訪問の日周パターン。破線の縦線は日没・日の出の、点線の縦線は午後9時、午前0時、午前3時を示す
photo 東京都立農業高等学校神代農場での年間のタヌキの共同トイレへの訪問の日周パターン。Aは2018年の「J1」トイレ、Bは2019年のJ1トイレ、Cは2019年の「J2」トイレ、Dは2019年の「J3」トイレの日周パターンを示す。J3トイレは道路沿いに位置する

 この違いは、森林の規模が原因と研究チームは考察している。国際基督教大学キャンパスには大規模な森林があり、たぬきの活動が調査地内だけで完結する。このため日々の活動が始まる日没直後に、多くのたぬきが共同トイレに訪問した可能性がある。一方、他2つのキャンパスは面積が狭く、森林も限られるため、夜間の移動経路として利用されていると考えられる。このため日没直後に大きなピークが見られなかったとしている。

 一方で同じキャンパス内でも違いが見られた。例えば東京都立農業高等学校神代農場全体では日没直後と夜明け直前が訪問のピークだったが、道路に隣接する共同トイレでは交通量が減る深夜以降がピークだったという。

 研究チームは結果について「都市に生息するたぬきは人間活動に対するリスクとのバランスを取りながら、個体同士のコミュニケーションを維持するために、人間活動の時間的変化に適応している可能性が示唆された」と分析。都市のたぬきたちは、人間の活動に敏感に対応することで、都市の環境に適応している可能性があるとしている。

 たぬきは排せつ場所で匂いを嗅ぐことで、個体間のコミュニケーションを取っていると考えられていることから「共同トイレをはじめとする個体間のコミュニケーションを図る場についても考慮していくことが、都市における野生動物の生息環境全体の保全につながると考えられる」との見方も示している。

 今回の調査は、同大学院農学研究院の小池伸介教授や、米イリノイ大学のアレン・L・マキシミリアン准教授らの共同研究チームによるもの。研究成果は、科学雑誌「Ecology and Evolution」に2025年12月17日付で掲載された。

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