映像制作にカメラは欠かせないわけだが、それを支える三脚は非常に地味な存在である。何せ完全なハードウェアなので、今更進化の余地がないと思われがちだが、実は近年イノベーションが次々と起こっている。
その1つの理由が、撮影の多様化だ。プロ用三脚はこれまでテレビロケや映画撮影などで使われるにすぎなかったわけだが、昨今はVlogなどのWeb動画がビジネス案件化するといった格好で商業映像の裾野が広がったことにより、軽量なカメラやスマートフォンを使うケースや、縦撮りと横撮りを同時に行うなど、非常に撮影が多様化してきた。それをサポートする格好で、プロ用三脚メーカーも多種多様な製品をそろえるようになってきた。
もう1つの理由が、中国勢の参入である。これまではカメラリグやLEDライトなど、比較的量とコスパでビジネスしやすい分野で参入が続いてきたが、三脚もトラベル用の小型モデルから参入し、次第に大型モデルへと移行しつつある。そんな中で、これまでの大型三脚のセオリーから脱却した格好で、新しいスタイルの製品を次々と投入するようになってきている。
プロ用三脚は1度買えば10年以上は使うものなので、買い替えの頻度は低い。従って新製品が出るのも5年に1度など、スパンが長かった。だが昨今は三脚が次第に低価格化してきたことで、別用途の2台目3台目として併用するケースも出てきた。また編集ツールの進化によりマルチカメラ編集が劇的に楽になったことで、カメラマンが1人でもマルチカメラ収録するニーズが出てきたことで、複数の三脚が必要になるなど、購入機会が増加とともに、新製品リリースのスパンも短くなっている。
今回はそんな三脚業界のイノベーションをまとめてみたい。
「Libec」(リーベック)ブランドで知られる平和精機工業は、2025年の新製品として「TK-210C」、通称「タンキャク」をリリースした。構造自体は一般の三脚同様3段だが、1つ1つの足が短い。最低高は21cm、最高高は70cmとなっている。
ローアングルで撮影する場合は、「ハイハット」と呼ばれるベースを合板などにネジどめしたものを使用するのが一般的だが、これだと自由に高さ調節ができない。つまりハイハットの一般的な高さである20cmから、一般三脚の最低高である60cmぐらいまでの間がなかった。それを埋めるのが「タンキャク」である。
ハイハットの高さから一般三脚の最低高以上をカバーするので、どっちに乗せても撮れないという高さが存在しないことになる。重量は2.7kgと軽量だが、耐荷重は40kgある。つまり重量級のレンズやリグで周辺機器を固めたカメラでも安心して使用できる。
ボール径は100mmだが、75mm用のアダプターが付属するので、英Vintenの大型ヘッドからENG用小型ヘッドまで対応できるなど、これがメインではなく「載せ替え」を前提とした設計となっている。
実は以前から同様の足の短い製品がサードパーティーから出ていたが、クランプのネジ長の関係でLibecの一部のヘッドが取り付けられないという問題があった。だがLibec自体がこの分野に参入したことで、この問題が解消された。
三脚の名門、ドイツのSachtler(ザハトラー)も、新ヘッド「aktiv」シリーズと脚部「Flowtech」シリーズでローアングル撮影に対応する。
aktivシリーズは、従来のように底部に着脱および水平調整のためのクランプノブがなく、レバーによるロック方式に変更された。このためレバー操作だけで簡単にヘッド部の着脱ができる。
またL字型水準器を標準搭載した。従来水平を見るための気泡型水準器は、上からのぞき込んで使用する。だが足を長く伸ばして身長を超えた場合、上からのぞき込むことができなくなってしまう。
そこでプリズムを使って真横から水準器が確認できるようにしたのが、L字型水準器だ。長押しすることでライトもつくので、夜間撮影時もわざわざ水準器を見るためにスマホで照らしてやる必要もない。
また脚部のFlowtechは、今はやりのシングルロック機構を備えたカーボンのモノコック三脚である。シングルロックとは、これまで三段脚ならそれぞれの足に2箇所のロック機構が必要になるところ、一番上のロックだけ外せば全部のロックが外れる機構である。
通常の撮影ではグランドスプレッタを使用するが、スプレッタなしでも脚部が3段階に固定できる。いわゆるManfrottoと同じ方式である。さらに脚部は180度開脚できるので、ベッタリ地面に展開できる。この時ヘッドがaktivであればクランプノブがないので、ほぼヘッド部の高さで撮影することができる。
脚部が三方の開くため設置面積はそれなりに必要になるが、ハイハットへの載せ替が不要でローアングル撮影が可能になるのはメリットが大きい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR