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がんになれば“アルツハイマー病”になりにくい……一体なぜ? マウスで検証 中国チームが発表Innovative Tech

» 2026年02月04日 08時00分 公開

Innovative Tech:

2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2

 中国の華中科技大学に所属する研究者らがCellで発表した論文「Peripheral cancer attenuates amyloid pathology in Alzheimer’s disease via cystatin-c activation of TREM2」は、がんとアルツハイマー病の逆相関関係の分子メカニズムを解明した研究報告だ。

 アルツハイマー病とがんの間には疫学的に興味深い関係がある。がんの既往歴を持つ人はアルツハイマー病を発症しにくいというデータが以前から報告されていたが、その理由は長らく不明だった。

 研究チームはアルツハイマー病のモデルマウスに肺がん、前立腺がん、大腸がんの細胞を移植し、末梢のがんが脳にどのような影響を与えるかを調べた。

アルツハイマー病のモデルマウスへの各種がん細胞の移植実験

 その結果、がんを持つマウスでは脳内のアミロイドβプラーク(アルツハイマー病の病理学的特徴であるタンパク質の凝集体)が減少し、認知機能も改善することが分かった。

 この効果の鍵を握っているのが、腫瘍細胞から分泌され、血液を通じて脳へと届けられるタンパク質「シスタチンC」(Cyst-C)だ。シスタチンCは血流を介して脳に到達し、アミロイドβオリゴマーに直接結合する。重要なのは、シスタチンCが脳の免疫細胞であるミクログリア上のTREM2という受容体を活性化する点。これによりミクログリアはすでに形成されたアミロイドβプラークを分解できるようになる。

がん細胞から分泌されたシスタチンCが、脳内の免疫細胞(ミクログリア)の受容体TREM2を活性化し、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβプラークを分解するメカニズムの図解

 研究チームは遺伝子改変マウスを用いてこのメカニズムを検証した。ミクログリアでTREM2を欠損させたマウスや、アルツハイマー病のリスク因子として知られるTREM2変異を持つマウスでは、がんによる改善効果が完全に消失した。これはシスタチンCとTREM2の相互作用がこの現象に必須であることを示唆している。

Source and Image Credits: Li, X., Tang, X., Zeng, J., Duan, L., Hou, Z., Li, L., … & Lu, Y.(2026). Peripheral cancer attenuates amyloid pathology in Alzheimer’s disease via cystatin-c activation of TREM2. Cell. https://doi.org/10.1016/j.cell.2025.12.020



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