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海外顧客の物件購入をスマホアプリ・動画で後押し とある不動産デベロッパーの台湾進出戦略ニッチ企業でもできる!IT活用で海外進出

» 2026年02月27日 16時00分 公開
[本村丹努琉ITmedia]

 世界でも高い技術力を持つことで知られる日本企業。ニッチ分野で目立たないものの、高い技術や世界シェアを持つ企業は少なくない。ドイツの経営思想家のハーマン・サイモン氏はこうした企業を「隠れたチャンピオン」と定義し、経済産業省も「グローバルニッチトップ企業」として支援している。

 グローバルニッチは高い技術力を持つ一方で、知名度が実力に比べて劣り、ITを駆使して海外でのブランディングや販売に生かしていることも多い。この連載では、こうした企業のIT戦略をインタビューで深堀りする。

photo 木下玲央取締役

 第10回は近畿・東海地方を中心に不動産事業を手掛けるプレサンスコーポレーション(大阪市)を取り上げる。同社は海外ビジネスに強い企業と連携し、外国人顧客向けのスマートフォンアプリなどの提供を通し、海外市場を開拓している。

 同社の木下玲央取締役は「海外進出には信頼できるパートナーが不可欠だ。今後はVRなども駆使して海外営業を積極化したい」と話す。聞き手は、海外進出する中小企業のブランディング支援などを手掛けるZenkenの本村丹努琉(もとむら・たつる)。

「規模とスピード」が強み、迅速な意思決定で好立地取得

──プレサンスコーポレーションは関西を中心に不動産業を営んでいます。事業の概要を教えてください

木下玲央取締役(以下、木下取締役):当社は1997年10月に創業した不動産デベロッパーです。企画から開発、分譲、管理まで一貫体制でマンション、戸建て住宅など幅広い事業を手掛けています。近畿、東海を中心に全国主要都市で展開しています。1200人超の従業員を抱え、今期の売上高は約2000億円に達する見通しです。

 当社の特徴は規模の大きさと、それに伴って入ってくる用地情報の多さです。例えば、当社の分譲マンションの供給戸数は年3000戸超と全国で第2位につけています。資金力もあるため用地規模の大小を問わず、取引先から優先的に物件情報が入ってきます。

 もう一つの強みは他社に比べて会社の意思決定が迅速であることです。創業社長から現在の社長までトップが営業出身で、自ら土地を見て目利きできる能力を持っています。このため案件によっては、社長自らが即断します。用地取得開発部にも大きな裁量が与えられていることから意思決定のスピードが迅速です。営業部長は30代が多く、30代でグループ会社の社長に就任した例もあります。

photo プレサンスコーポレーションは関西を中心にマンション事業などを手掛ける

──海外市場の開拓はどのような状況ですか

木下取締役:2023年に台湾に進出しました。シンガポールや香港、上海でもテストマーケティングを実施しましたが、台湾が最も需要が多く、当社の物件ともマッチしていると考えています。今後、富裕層の多いシンガポールなどにも本格進出する可能性があります。

──どうして海外に進出しようと考えたのですか

木下取締役:80億人もの人口を抱える海外市場には多くの富裕層が住んでおり、円安を受けて日本の不動産への潜在需要も高まっています。海外には、当社のビジネスチャンスが大きく広がっていると言えます。

 直接のきっかけは、当社の物件を購入した外国人の方への対応でした。外国人のオーナーは、購入物件に自分で住む場合と貸す場合があります。オーナーが海外に住んでいる場合でも、管理組合に管理費を支払わなければなりませんが、海外の顧客は引き落とし用の銀行口座を持っていません。

 言葉の壁もあって苦労していたところ、外国人の不動産オーナー管理を得意としているWealthPark RealEstate Technologies(東京都渋谷区、以下ウェルスパーク)と、連携できました。

 現在は同社がいったん支払いを肩代わりする形で、海外にいる物件オーナーに請求してくれています。こうした環境整備を経て、外国人が当社の物件を購入しても管理がうまくいくようになりました。台湾などアジア人が日本の不動産を購入したいという意欲は強く、本格進出を考えるようになりました。

アプリで資産管理を可視化、台湾での信頼獲得へ

──海外ビジネスでITはどのような役割を果たしていますか

木下取締役:例えば当社は、協力会社を通じて外国人オーナー向けのスマートフォンアプリを提供しています。これにより、プレサンスの物件の外国人オーナーは、日本で購入した物件について、リアルタイムで「いくら賃料が入ったか」「管理組合に管理費・修繕積立金をいくら払ったか」「管理会社に管理費用をいくら払ったか」など、さまざまな情報をアプリから確認できます。

 アプリを通じてチャットもでき、所有している物件の工事の確認や報告、承諾なども可能です。所有環境を整えることで、台湾のオーナーが安心して物件を購入できるようにしました。

photo プレサンスが提供するアプリ

──台湾では営業面でもITを活用していると聞きました

木下取締役:ウェルスパークに物件の動画を編集してもらい、それをメールなどで海外の見込み客に送っています。その上で来日して現地まで足を運んでもらって物件を案内に、購入を決めてもらう流れです。

 専門の会社と協力して台湾語のWebサイトや同業他社との比較サイトも制作し、そこから潜在顧客が流入するケースも出てきました。すでに台湾での売上高は20億円規模に膨らんでいますが、将来的には売上高全体の10%程度まで販売を増やしたいと考えています。

──今後のITの活用をどう考えていますか

木下取締役:将来はさらに充実させていきたいと考えています。例えば、リアルタイムで、VR(仮想現実)を通じて対象物件の中や街並みなど周辺環境を見られ、ネット上で購入を決断できるくらいにできれば良いと思っています。

──商習慣が違う海外では、現地での情報収集ができないと販売促進が難しいと聞きます。VRだけでは手薄になるのではないかという懸念もあります

木下取締役:もちろん、現地での情報収集や販促は重要です。ただ、海外の潜在顧客はいつでも気軽に飛行機で来日できるわけではありません。そうした場合にインターネットやVRもあればビジネスをやりやすくなります。ITやネットを活用することによって、潜在顧客が何度も来日する手間が省けるため、購入の決断のスピードが上がるという利点があります。

──信頼できるパートナーができたことが、海外への本格進出に役立ったということでしょうか

木下取締役:成功には良いパートナーが不可欠です。特に当社には英語や中国語ができる社員がおらず、海外進出はハードルがとても高いと考えていました。パートナー企業であるウェルスパークは、半分以上の社員が英語や中国語などを話すことができます。外国人オーナーの管理、言語能力などさまざまな面で助けられています。

──パートナーの選び方や着眼点を教えて下さい

木下取締役:会社の仕事への姿勢が共通していることが大事だと考えています。当社は競争の激しい不動産営業の会社ですから、仕事の仕方が泥臭いといって良い面も少なくありません。協力していくには、企業文化や仕事への価値観、職場の空気が似ていることが大事ではないかと思います。

著者プロフィール:本村丹努琉 Zenken取締役

通信機器販売やエネルギーコンサルティングなどのベンチャー企業3社で営業責任者として組織構築に従事。1人のカリスマだけに頼らない組織営業スタイルを確立し、収益増に貢献した。2009年に全研本社株式会社(現:Zenken株式会社)に入社し、ウェブマーケティングを担当する「バリューイノベーション事業部」(現:グローバルニッチトップ事業本部)の立ち上げに参画。コンテンツマーケティング黎明期から、オウンドメディアを基軸とした WEBブランディングを提唱し、14年間で約8000社のインサイドセールスを構築した。

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