「AFEELA」は単独で失敗したわけではない。ホンダ四輪戦略全体の揺らぎの中で、未来への投資としての優先順位を失ったのである。もともとホンダはエンジン屋であり、機械で差をつくる会社だった。しかし競争軸はソフト、電池、半導体、クラウドへ移った。その転換の痛みが、「AFEELA」の開発停止にまで及んだ。
一方、ソニーにとってソニー・ホンダモビリティの価値が直ちに失われるわけではない。ソフトウェア、センサー、映像、エンターテインメントの技術はSDV時代における応用範囲が広い。一方で、車両開発への関与を完全に断つとも限らず、かつてソニー単独でマグナと組んだように、受託生産パートナーと連携する選択肢や、新たな製造委託モデルを探る可能性も残る。ただし、量産責任を単独で背負う難しさは今回あらためて浮き彫りになった。
例えば、スマホやデバイスで知られる中国HuaweiはADAS、OS、コックピット、電動化制御といった自動車関連技術を持っている。ただし、自社工場で車両を量産しているわけではなく、こうした中核技術をもとに、「AITO」のような合弁ブランドを通じて事実上の自動車事業を展開している。車体製造はセレスなどの提携先が担い、ファーウェイは「頭脳」と「販売力」を提供する構図だ。
米Appleのサプライヤーとして知られる台湾Hon Haiは、EVプラットフォームの受託生産に進もうとしている。そのような視点に立てば、ソニーにとって、ソニー・ホンダモビリティを活用するシナリオはある。
ホンダはまず経営再建を優先し、ハイブリッドを軸にプロダクト・ポートフォリオを見直しつつ、国内向けなどの用途別にEVを選択集中で組み直すだろう。
かつて日本の家電メーカーはテレビは画質競争で勝ったが、最後は価格競争に敗れ、リモコンの向こう側にあるサービスを握った企業が勝敗を左右することになった。いま自動車も同じ局面にある。「AFEELA」の開発中止という報道がわれわれに与えた示唆は、一つの車種の開発ストーリーに終わらない。日本企業が未来を語るとき、その夢をどこまで事業として守れるのか、そして日本企業はソフトの時代に何を売るのか――その問いである。
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