インターネットを使って動画をリアルタイムで配信するネット中継は、日本では2008年に「ニコニコ生放送」がユーザー配信機能を実装したあたりがスタート地点だと思われる。翌年にはTwitterの台頭とともに、「Ustream」が注目されるようになった。
複数台のカメラを切り替えて出力するスイッチャーは、放送用以外には用途がなかったが、ローランドは早くからVJプレイ向けに業務/コンシューマーレベルのスイッチャー製品をリリースしていた。
オーディオミキサーとスイッチャーを一体化した「VR-5」(11年1月発売)は、米国ではキリスト教会のミサの衛星放送中継用設備として多数導入されたが、日本では同年3月に東日本大震災が起こり、テレビでは放映できない議会やトークイベントなどをネット中継するため多用されるようになった。
HDMI入力4つに決め打ちして、なるべくコンパクトにまとめたスイッチャー「V-1HD」は、15年に発売された。翌16年には、SDI入力バージョンの「V-1SDI」も発売され、ネット中継でよく使用された。
ネット中継はその後ビジネスとして発展し、ウェビナーや製品発表会、イベント配信などを専門に請け負う人たちも登場した。彼らの多くは個人であるが、チームを編成して中継業務に当たる。
ビジネスでの中継になると、入力ソースがカメラだけでなく、PCやDVDプレーヤーなど多様になる。このため、入力側にスケーラーを搭載したローランドのスイッチャーは、解像度やフレームレートをシステムに合わせなくても入力できるとして、重宝された。
規模拡大によって8入力や16入力といったスイッチャーも普及したが、あるときから多様性を残したままで、もう少しシステムをシンプルにできないかといった試行錯誤がされるようになった。結線数が多くなるほど、トラブルも増す。リハーサル時間が十分に取れないネット中継では、システムのシンプル化は切実な問題である。
こうしたニーズに対応する製品として、26年4月に発売された「V-1-4K」がある。V-1HD/SDIの登場から約10年ぶりにシリーズが更新されることとなった。
V-1-4KはV-1シリーズの4K対応版という位置付けではある。ただ内容的には初代V-1を拡張したのではなく、V-1以降発売された多くのスイッチャーのエッセンスを凝縮させ、入力数を絞ってコンパクト化した製品だといえる。
ボディーサイズは、横幅はV-1HD程度だが、背面を高くしてかなり前傾したデザインになっている。HDMI入力を横向きではなく縦に実装したことで、入出力数を増やした。
HDMI入力は5つで、そのうち1つはPCを接続することでテロップやグラフィックスのFill+Keyが受けられる、「Roland Fill+Key」対応となっている。
Roland Fill+Keyは、Windows向けグラフィックス生成ソフト「Graphics Presenter」を走らせることで、PCのHDMI端子からケーブル1本でFillとKey信号を伝送する。V-1-4Kに合わせて、4K対応のGraphics Presenter Ver.3もリリースされる。
各入力は4:2:2 8ビット、最大3840×2160/60pに対応し、HLG/PQ/SDR、REC.2020/REC.709をサポートする。入力全部にスケーラーを備えており、4KとHDのソース混在も可能だ。
入力は5だが、クロスポイントは8ある。内部にフレームメモリを2つ備えており、静止画を出力できること、後述するROI機能を使うと入力が増えることから、クロスポイントは自由にアサインできるようになっている。静止画のソースはUSBメモリからの転送のほか、入力されているカメラ映像からのキャプチャーも可能だ。
出力も5つあり、プログラム、プレビュー出力のほか、出力が自由にアサインできて、なおかつスケーラーを備えた出力が2系統ある。例えば1番の4K入力をHDにダウンコンバートして、スルー出力するといった使い方ができる。5つ目の出力はマルチビュー専用で、こちらはHD解像度固定となる。
オーディオ入力は、HDMI経由のステレオ入力が合計10chと、XLR入力がある。XLRはマイク出力に使われるが、本機はラインレベルにしか対応しないため、マイクを直結することはできない。業務用オーディオ機器を接続するための実装と考えたほうが良いだろう。
出力はHDMI出力から全て出力されるほか、RCA出力、ヘッドフォン出力がある。
USB-Cポートは、オーディオ入出力両方に対応するほか、USB Video Classの出力にも対応する。またiPadを接続してリモートコントロールアプリ「VenuSet」でコントロールするなど、さまざまな使い方が想定されている。
LAN端子からは、PTZカメラ制御が可能だ。ただマニュアルコントロールができるわけではなく、本体のアサイナブルパッドを使って、決まったポジションの呼び出しができるといった制御になる。
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