まつもとあつしの「アニメノミライ」
「作れば売れる」時代の終わり――岐路に立たされるアニメ業界、決算が映す各社の“明暗”を分けたもの(2/3 ページ)
異世界系がダメになったわけではない――「勝ちパターン」が機能しなくなった
今回の決算で最も大きな衝撃を与えたのがKADOKAWAだ。連結営業利益は前年同期比51.3%減の81億円、アニメ・実写映像事業は▲4億6500万円と赤字に転落した。
このほころびを突く形で、外資系アクティビスト(物言う株主)であるオアシス・マネジメントから夏野剛社長の解任要求が出されるという、異例の事態にまで発展している(ITmedia関連記事)。オアシス側の狙いは、先般のサイバー攻撃への対応遅れだけでなく、明らかな「業績悪化への不信任」であると見られている。
KADOKAWAはこれまで、コアなファン層に刺さるコンテンツを数多く並列展開し、それをメディアミックスで回収するビジネスモデルを構築してきた。その中核を担ってきたのが「なろう・異世界転生系」の作品群だ。しかし、この量産モデルが飽和し、打率の低下を招いている。
数土氏は、問題の本質をこう分析する。
「異世界系がダメになったわけではない。3年ほど前から見えているトレンドだが、狭い市場に対してKADOKAWAのみならず各社があまりにも作品数を投入しすぎた。米Netflixのような配信プラットフォームも、異世界系は手堅く視聴回数を稼げる安定したジャンルとして確かな需要がある。しかし供給が多すぎれば、1作品当たりのファンの数はどうしても分散してしまう。数が多すぎることによる打率の低下が、メディアミックスモデルを直撃している」
さらに問題を複雑にしているのが、スタジオ内製化による固定費の増加だ。KADOKAWAは近年、ENGIやKinema Citrusのほか、2024年に買収した動画工房など複数の制作スタジオを傘下に収め、先行投資を進めてきた。こうしたスタジオ買収等に伴うのれん代が積み上がっており、これが採算ラインを押し上げる要因となっている。
見方を変えれば、自社IPの内製率を50%まで高め、長期的かつ安定的な制作体制を構築するための「未来に向けた投資」であるとも読める。しかし足元の数字としては、プロデュース力や二次展開の設計が、コストの膨張に追いついていないのが実情だ。
「テック系の発想で、優れたものをたくさん作れば売り上げが伸びていくというふうに考えていたと思うんですけど、エンタメはそういうものじゃないんじゃないですか。量産すればヒットが比例して増えるわけではないので」――数土氏はそう指摘する。
一方、KADOKAWAをめぐっては、資本の安定性という別の問題も浮上している。ソニーによる買収観測が報じられた2024年末の時点で、本連載でもその脆さを論じていた。
今回のオアシスによる解任要求は、業績悪化をきっかけに外資マネーがその問題に正面から切り込んだ格好だ。
東宝・東映アニメーション――「出口戦略」と「生産力」が生む強さ
巨大IPを抱える映画会社からは、対照的な事業戦略が見えてくる。
東宝の2026年2月期決算は、営業収入3606億円、営業利益678億円と過去最高を更新した。ただし、IP・アニメ事業単体の営業利益は222億円から173億円へと約49億円の減益だった。ゲームタイトルの償却増や一過性費用が影響したものだが、数土氏はこの数字を前向きに読む。
「『IP・アニメ事業』は減益ですが、それでも評価できると思っています。ポイントは、東宝が『IP・アニメ事業』という概念を打ち出しているところです。第4の事業軸というのは、アニメ単独でなく、映像から派生するライセンス運用全体のことなんですよね。アニメで日本がここ10年成功したパターンを実写にも応用できるんじゃないかというのが東宝の考えで、ゴジラも含めて、実際に成功し始めています。IPとは何かという本質をきちんと理解しているところで評価できます。自分の強い場所から周辺に広げていくことに対して、果敢に攻めて、かつ成果が出ている」
さらに東映アニメーションについては、2点の強みを数土氏は挙げた。
「二次展開を広げるのがとても得意で、ゲゲゲの鬼太郎、スラムダンク、ワールドトリガー、デジモンなど、古びさせることなく長く20年、30年、40年と使い続けることにとてもたけています。もう1つは圧倒的な生産力です。大阪スタジオを大泉に匹敵する規模で作ろうとしている。フィリピンスタジオという成功事例があり、ベトナムスタジオの設立に向けても動いています。生産力を単純に倍にするつもりだと思うし、東京圏だけではできないと分かって大阪と海外に求めた判断は正しい。そして自社の強いところをさらに強くしていくのは、お金を正しく使えているということです」
両社に共通するのは、儲けた資金を正しく再投資する判断力と、プラットフォームに依存せず自らが「送り出す場所」を作っているという点だ。
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