2019年の開始以来、多様な最新論文を取り上げている連載「Innovative Tech」。ここではその番外編として“ちょっと昔”に発表された世界中の個性的な研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米テュレーン大学と米ハーバード大学に所属する研究者らが医学誌「European Heart Journal」で発表した論文「Coffee drinking timing and mortality in US adults」は、コーヒーを飲む時間帯によって健康効果が異なることを明らかにした研究報告だ。
研究チームは、米国全国健康・栄養調査(NHANES)に参加した4万725人の成人を対象に、コーヒーを飲む時間帯を分析した。その結果、全体の約36%が午前中(午前4時〜午前11時59分)に飲む「朝型」、14%が朝・昼・晩と分散して飲む「全日型」に分類された。残りの約半数はコーヒーを飲まないグループである。
対象者の健康状態を約10年間にわたって追跡したところ、朝型の人はコーヒーを全く飲まない人と比べて、全死亡リスクが16%低く、心臓病や脳卒中といった心血管疾患による死亡リスクは31%も低いことがわかった。その一方で、全日型のグループにおいては、これらの死亡リスクの有意な低下は確認されなかった。
この結果は、紅茶摂取量やカフェイン入り炭酸飲料の摂取量をさらに調整しても変わらなかった。
さらに、コーヒーを飲む量と健康効果の関係も、飲むタイミングに左右されることがわかった。朝型のグループでは、飲む量が多いほど死亡リスクが低下する傾向が見られた(最もリスクが低かったのは1日2〜3杯程度)。一方、全日型のグループでは、いくら量を増やしても死亡リスクの低下にはつながらなかった。
なぜ飲む時間帯によってこれほどの差が生じるのかについて、研究チームは2つの仮説を立てている。1つ目は、午後や夜間のコーヒー摂取が体内時計(概日リズム)を乱すという仮説。遅い時間にカフェインをとると、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が抑えられ、結果として血圧や体内の酸化ストレスに悪影響を及ぼす可能性がある。
2つ目は、コーヒーの持つ抗炎症作用と生体リズムの相性。人間の体は、朝のタイミングで体内の炎症マーカーが高くなるリズムを持っている。そのため、この時間帯に合わせてコーヒーの成分を取り入れることが、炎症を抑える上で理にかなっているのではないかと考えられている。
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