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AIに頼ると技術が落ちる? 医師・エンジニアたちの懸念、検証結果は……Natureも警鐘Innovative Tech

» 2026年06月22日 07時00分 公開

Innovative Tech:

2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2

 科学誌Natureの報道によると、AIツールが職場に普及するにつれて、専門家たちが長年培ってきたスキルが衰えてしまうのではないかという懸念が広がっている。

photo AI使用を懸念するイラスト(絵:おね

 オランダのヘルスケア事業者が全米で実施した調査によると、看護師の70%、医師の77%が、AIへの過度な依存による自身のスキル低下に不安を抱いているという。実際に医療やITといった専門分野では、AIによるスキルの低下がすでに起き始めていることを示すデータもあり、AI時代に人間の専門能力をどう維持するかが課題となっている。

 例えばポーランドの内視鏡専門医を対象とした研究は、AIがいかに早く人間の能力を低下させるかを浮き彫りにした。2000回以上の大腸内視鏡検査の経験を持つベテラン医師たちに、前がん病変(腺腫)をリアルタイムで見つけるAIを特定の日だけ使わせた。すると、医師はAIのサポートに慣れてしまい、AIが使えない日のパフォーマンスが目に見えて悪化した。

 AI導入前は28.4%の確率で病変を発見していたが、導入後にAIの支援なしで検査をした場合、発見率は22.4%にまで落ち込んでしまった。AIに頼ることで、自力で判断を下す際の集中力や自分で見つけようという責任感が薄れてしまうことが原因として指摘されている。

 同様のスキルの喪失は、プログラミングの世界でも確認されている。Claudeを開発する米Anthropicは、エンジニア52人にコードを書かせ、うち半分だけにAIアシスタントの使用を許可する実験を実施。作業後に内容の理解度を測るテストを実施したところ、AIを使ったグループの平均点は50%と、自力で作業したグループの67%を下回った。

 特に、エラーの原因を見つける問題での成績が悪く、AIに作業を任せて表面的な成果は出せても、その背後にある仕組みを学習できていなかった。この研究論文はarXivに投稿されている。

 かつてカーナビゲーションシステムが人々の道順を覚える能力を低下させたように、便利な技術が人間のスキルを奪うことは過去にもあった。しかし、現在の生成AIは思考や解釈といった人間特有の認知能力まで自動化してしまう点で、これまでの技術とは異なる。

 AIによるスキルの低下を防ぐためには、自分がどれだけの作業をAIに委ねているかを自覚し、AIの限界を正しく理解することが不可欠。AIの答えを何も考えずに受け入れるのではなく、常に自ら考え、警戒心を持ちながら技術とバランスよく付き合っていく姿勢が求められている。

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