生成AIの活用は、順風満帆ではなかったという。石井氏は「AIは何でも覚えているという前提で始めたが、全く無駄だった」と述べ、試行錯誤の末にたどり着いたAIを制御する技術として(1)忘れた内容を思い出させ続ける「記憶の補強」、(2)ルールを人ではなくAIが参照するファイルに置く「ルールの外部化」、(3)役割と経歴を与えて思考の土台を定める「人格の付与」、(4)コード生成のプロンプトをいきなり作らず「プロンプトを作るためのプロンプト」から組み立てる「2段階方式」──の4点を挙げた。
その上で「AIは丸投げでは動かない。記憶、ルール、人格、2段階設計というAIを制御する技術こそ、現場での最大の発見だった」と強調した。
AI駆動開発の最大のボトルネックは、もはやコードではなく要件の整理だったという。指示が曖昧なら、AIは曖昧なまま動くものを作ってしまう。そこで、現場からの「経費精算を楽にしたい」といった雑な依頼を「5W2H」で構造化する型を作った。
誰が、何を、なぜ、いつ、どこで、どのように──ここまでは依頼文からある程度推測して埋められる。だが「予算はいくらか」「導入はいつまでか」という費用や期限を指す「HOW MUCH」は、依頼者が言い忘れやすい。この埋まらなかった項目こそ、依頼者に確認すべき質問になるという。
石井氏は「AIがコードを書く時代、品質と時間は『何を作るかを言語化する工程』に集中する。要件整理の質がそのまま成果物の質になる」と指摘。「システムエンジニアがビジネスエンジニアになる時代が来た」と語った。
プロジェクトは現在も進行中で、石井氏は「万事解決のハッピーストーリーではなく、道半ば」と話す。現場主導で業務フローを再構築しながら、新旧システムの比較による段階的な切り替えと、部門横断のデータ基盤の整理を進めている段階だ。
石井氏は「これからは物流データ自体が商品になる。AIを使う時代から『AIと考える組織』へ変わる」と展望を語り、「30年の因習をAIと業務の力で解体する。100年の老舗が生成AIと共に転生していく物語は、まだ終わっていない」と講演を締めくくった。
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