Windows 7はWestmereで強力になる:Intel & Microsoft Windows 7 Technical Briefing
2009年も残すところ四半期ちょっと。これから2010年にかけてIntelもMicrosoftも新製品で盛り上がる予定。その両社がサンフランシスコで合同イベントを行った。
かつては「Wintel」とも呼ばれるほどに強力なコラボレーションでPC業界をリードしてきたIntelとMicrosoftだが、MicrosoftのWindows Vistaでの不調と、Intelが挑んだPC分野以外への進出やLinux事業への投資など、最近は必ずしもかみ合っているように見えなかったりする。だが、2009年10月22日に予定されているWindows 7のリリース、そして9月7日に正式発表されたIntelのデスクトップPC向けCPU「Lynnfield」など、2009年末に向けて新製品ラッシュが続く。
こうした背景から、両社は共同のプロモーションへ乗り出そうとしている。ここでは、9月1日にサンフランシスコで行われた「Intel & Microsoft Windows 7 Technical Briefing」で紹介された、Windows 7と最新CPUの組み合わせでユーザーに提供されるメリットをチェックしてみよう。
消費電力の低減で、バッテリー駆動時間を改善
Windows 7 Technical Briefingでは、「Energy Efficiency Collaboration」「Security Collaboration with Windows 7 and Westmere」「Virtualization Collaboration」「Performance and Responsiveness Collaboration」の4つのパートに分かれて、それぞれの分野での協業体制について説明している。ここでは順番に解説してみよう。
ノートPCの運用で最も重要なのがバッテリー駆動時間だ。ちょっと無線LANにアクセスしただけですぐにバッテリーがなくなってしまうようでは、快適なモバイルコンピューティングとはいえない。しかし、バッテリー関連の技術で大きなブレイクスルーがない現状で(燃料電池が普及価格帯のモバイルPCに搭載されるまでには、まだまだ時間が必要だ)、ノートPCベンダーにできるのはハードウェアの消費電力の抑制とソフトウェアやファームウェアによる高度な電力管理に限られる。そのため、Windows 7で採用された「Timer Coalescing API」と、IntelのPenryn世代以降で導入された「Deep Power Down Technology」(C6 Power State)はバッテリー駆動時間の改善に大きく寄与することになる。
CPUがアイドル状態にあるときは、コア電圧を落としてCPUの消費電力を抑制するが、現在の低消費電力CPUのトレンドだ。Deep Power Down Technologyはこのアイドル状態における電圧抑制を従来より低い“C6”まで落とし、より少ない消費電力を実現できる。その一方で、アイドル時間があまりにも短く、通常の駆動モードとアイドル時間が断続的に続くようになると、その切り替えのために電力消費がかえって増加してしまうこともありえる。この問題を解決するために、アイドル時間を可能な限り長くし、切り替え処理が断続的に発生しないようにソフトウェアで対応するのが「Timer Coalescing」だ。
Windows上でステータスの切り替え処理が断続的に発生する原因として、個々のプログラムやプロセスが断続的に起動して処理を呼び出すことが考えられる。独立した個々のプロセスは、互いの動作状況を把握できないため、無作為にCPUのパワーを消費してしまう。個々のプロセスはタイマーによって各自のタイミングで起動するが、それをOSで一括管理するのがTimer Coalescingの考えだ。ドライバやアプリケーションがTimer Coalescingを活用することでアイドル時間が増し、その結果としてシステムが省電力となってバッテリー駆動時間が増加する。Windows Timer Coalescingではイベントドリブン型のプログラミングを推奨しており、このガイドラインに準拠したアプリケーションではより大きな効果が得られるだろう。
Westmereで暗号化処理能力が向上する
Intelでは、現行のNehalem世代(45ナノメートルプロセスルール)に続くCPUとして、32ナノメートルプロセスルールを採用するWestmere(開発コード名)を2009年末から2010年前半にかけて順次リリースしていく計画だ。NehalemからWestmereへの移行は、アーキテクチャの変更ではなく製造プロセスの縮小が行われる。機能的には現行のNehalemを踏襲することになるが、それでも、部分的な機能追加やアーキテクチャの変更が施される。その1つがAES(Advanced Encryption Standard)用命令の追加だ。この命令セットによって暗号の高速処理が可能になる。Windows 7やWindows Server 2008 R2に用意される暗号処理用APIの「Crypto API」でこの命令セット群をサポートしており、Westmereを搭載したシステムが出荷されたらすぐに高速暗号処理の恩恵を受けられるようになる。
AESで性能向上が期待される用途の1つが、Windows Vista以降に実装されたドライブ暗号化技術の「BitLocker」だ。Windows 7でBitLockerを利用すると、Westmereを導入したプラットフォームでは高速処理の恩恵が受けられる。また、無線LAN暗号化技術のWPAでは暗号化方式としてAESが選択できる。
AESは比較的処理が重い暗号アルゴリズムとして知られているが、専用命令セットの利用でCPUに大きな負荷をかけることなく暗号化通信が利用できるのは大きい。CPUに負担をかけないので、システムの省電力にもつながるだろう。
Windows XP Modeの高速動作も実現する
Windows 7におけるレガシーアプリケーション用の仮想環境、いわゆる「Windows XP Mode」は、過去の環境で利用しているアプリケーションをWindows 7でも動作を保証し、ユーザーの最新アーキテクチャへの移行を促すオプションの1つだ。
Intelによれば、Virtual Processor Identifiers(VPIDs)やExtended Page Tablesなど、Intel VTに実装された技術がWindows XP Modeを実現している「Windows Virtual PC」のパフォーマンスを強化し、特に多くのパワーリソースを消費する旧式アプリケーションであっても、Windows XP Modeを使って問題なく実行が可能になると説明している。
HT最適化による性能強化
Windows 7とIntel製CPUを組み合わせたプロモーションでは、Intel Hyper Threading Technology(以下HT)の改良が大きな訴求ポイントとして扱われている。Nehalem世代のCPUで復活したHTは、以前のPentium 4世代と比較しても改良されているが、さらに、Windows 7では、HTを活用することでマルチスレッド動作におけるスケジューリングを最適化する機能が組み込まれており、HTのメリットを存分に活用できるという。
Windows 7で導入されたインテリジェント・スケジューラでは、1つ1つの物理コアやHTにおける論理コアの相互関係を認識したうえで、個々のスレッドのスケジュールを調整するようになっている。1つのコアに2つの動作スレッドが存在し、別のコアがアイドル状態のとき、それを認識してスレッドを移行する機能も有している。コア1つあたりの論理コア動作状況をシステム全体の処理負荷を考慮しつつ調整することになる。こうしたコアとスレッド割り当て動作の最適化を実際の処理シナリオ分析に沿って行うのが高速動作の秘訣だとMicrosoftはいう。
以上がIntelとMicrosoftが共同で開催した技術説明会で発表された概要だ。9月7日にはNehalem世代の「Lynnfield」がリリースされ、9月下旬には、Nehalem世代のノートPC向けCPUとなる「Clarksfield」の正式発表も行われると言われている。9月22~24日にはサンフランシスコでIntel Developer Forum(IDF)が開催され、10月6日にはニューヨークでコンシューマ市場をターゲットにしたMicrosoftのオープンイベント「Open House」が行われる。そして、10月22日には同じニューヨークでWindows 7の大々的なローンチイベントが予定されている。
その日に向けて関連する情報が断続的に出てくるはずなので、マシンのリプレースを考えているユーザーは定期的に最新情報をウォッチしておきたいところだ。
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