ニフティは付加価値とともにモバイルWiMAXを提供する
UQコミュニケーションズの試験運用開始にあわせ、複数のISPがMVNOによるWiMAXサービスを発表した。全国区「ニフティ」はモバイルWiMAXをどう評価しているのだろうか。
UQ WiMAXのMVNOが打ち出すメリットとは?
2009年2月26日から始まったUQコミュニケーションズによるモバイルWiMAXの試験運用は、5000人限定で募集したモニターを始めとして、UQコミュニケーションズの社員自らも、圏内エリアの検証などで、東京23区や横浜市川崎市の一部とされているサービスエリアを駆け巡っている。
サービスインから3カ月が経とうとしている段階でも、移動中の電車や乗り物の中で継続して使うのはさすがに難しく、圏内にある建物の中でもデバイスがある場所の微妙な違いで利用できたりできなかったりと(実際、丸の内にあるPC USER編集部でも机が1つ違うだけで圏内と圏外が分かれてしまう)、基地局の少なさを実感することになる。
しかし、それでも、いったんモバイルWiMAXに接続すると、その速さは携帯キャリアの3Gを使ったデータ通信とは比べ物にならないほど速い。動画やアプレットの導入などで重くなる一方のWebサービスを考えると、モバイルWiMAXの普及が期待されるところだ。
現在、UQコミュニケーションズが運営するUQ WiMAXが日本で利用できるただ1つのモバイルWiMAXサービスだが、このインフラを利用するMVNOとして、ニフティやBIGLOBEといった大手ISPやワイコムといった北海道のISPがUQ WiMAXとの連携を表明してる。このように、MVNOでサービスを提供する事業者が増えてくると、ユーザーがUQ WiMAXを利用したいと思ったとき、契約する事業者をユーザーが選択できるようになる。
ここで選ぶポイントとなるのが「コストか付加価値」だ。ワイコムは月額使用料としてUQコミュニケーションズの4440円より安い3980円を提示している(ただし、2009年5月の時点で、モニター期間終了後のモバイルWiMAXモジュールレンタル料金は明らかになっていない)。一方、全国区のニフティで、モバイルWiMAX向けサービスを整備している同社のISP事業本部ISP企画部ワイヤレスBBチームでは、現時点でモバイルWiMAXに特化したサービスを提供する予定をまだ定めていない。
ニフティとしては、7月に予定されている本格運用開始までに、サービスエリアやユーザー数、転送速度など、UQ WiMAXが順調に拡大していけるのかの「評価」をしている段階としている。30人という少数ながら無料モニターを1期、2期と時期をずらして段階的に募集しているが、これも時系列的な変化を正確に把握するためと説明している。
利用料金についても、ニフティはその額を決定していない。すでに、第1次募集の無料モニターが決定して、機材も発送されている段階だが、彼らにも無料モニター期間が終了したあとに使用を継続する場合の使用料を提示していない。すべてが検討段階と前置きしたうえで、ISP企画部ワイヤレスBBチームは、ニフティが予定しているモバイルWiMAX接続サービスでは、ユーザーに付加価値を提供することでUQ WiMAXよりやや高めの月額使用料を設定する可能性を示唆している。ニフティでは付加価値を訴求する道を選択するようだ。
UQ WiMAXの弱点をカバーできるニフティの無線LANサービスだが
ニフティは付加価値として具体的に何をユーザーに提供しようとしているのだろうか。モバイルWiMAXサービスの位置付けは、すでにニフティが「接続サービス」で用意している「高速モバイル通信」と並ぶことになる。現在ニフティの高速モバイル通信は、携帯キャリアのMVNOとしてサービスを提供しているが、モバイルWiMAXのMVNOも、その選択肢の1つとして用意されるそうだ。現時点では、モバイルWiMAXのために特別なコンテンツサービスといったニフティの独自メニューは白紙状態のようだ。
ニフティにとってすれば、まだUQ WiMAXの評価期間であるため、モバイルWiMAXのサービスに関して「白紙」であるのもやむを得ないところだろう。ただ、ニフティがすでに用意している全国規模のネットワーク接続サービスや関連企業である富士通のFMVシリーズなど「ニフティだから用意できる」リソースを利用すれば、現在のモバイルWiMAXが抱えている問題点を解決し、ハードウェアと一体になったサービスなど、ユーザーが得られるだろうメリットは大きいと思われる。
先ほども紹介したように、ニフティは3Gによる高速データ通信接続サービスだけでなく、公衆無線LANサービスのHOTSPOTやBBモバイルポイント、フレッツスポットのそれぞれを(@niftyの契約プランによって)利用できる。UQ WiMAXの弱点として、現状では利用エリアが限られることと、室内で使えるエリアが窓際に限られることが挙がっている。UQコミュニケーションズではこの解決のために、UQ WiMAXのユーザーが無料で利用できる無線LANサービス「UQ Wi-Fi」を用意するが、予定されている利用エリアとしてはJRの主要駅と東海道新幹線の車両などごく限られている。ニフティが提供するモバイルWiMAXを契約すれば、(契約したプランにもよるが)全国に展開している無線LANアクセスポイントをニフティで取得したアカウントで使えるようになる。UQ WiMAXのバックアップとしては理想的な状況といえるだろう。
しかし、モバイルWiMAXサービスとそのほかの接続サービスは独立しており、それぞれを利用するには個別に契約する必要がある。実際、ニフティが提供している無線LAN接続サービスと3Gデータ通信サービスを1つのパッケージにした契約プランは存在せず、ニフティの現時点における考えとしても、モバイルWiMAXの接続サービスと無線LANサービスを1つにまとめた契約プランを準備する予定はない。「それぞれを利用してもらっても、ユーザーにそれほど負担にならない」というのが理由らしいが、それなら、ユーザーは個別に公衆無線LANのサービスを利用するわけで、ニフティが付加価値のために価格を高く設定する予定のモバイルWiMAX接続サービスを利用しなければならない動機とはならない。
現在、モバイルWiMAX対応モジュールはUSB接続タイプとPCカード、ExpressCardタイプといった「外付け」に限られている。インテルでは、Centrino 2の構成要素としてモバイルWiMAXモジュールを挙げており、すでに、無線LANコントローラとモバイルWiMAXコントローラを1つにまとめた内蔵モジュールも用意している。無線LANモジュールを内蔵したCentrino対応ノートPCでも分るように、ノートPCにモバイルWiMAX対応のモジュールが内蔵されたら、出先での使い勝手は飛躍的に向上する。同じ“富士通仲間”として、ニフティとPCのFMV BIBLOシリーズが連携したサービスが登場することもありえるが、こちらについても富士通は「白紙」だ。UQ WiMAXの本格的な商用運用開始に合わせて、FMV BIBLOシリーズがモバイルWiMAXをキーワードにしてアピールをする可能性は多分にあるだろうが、具体的な内容やスケジュールは明らかにされていない。
屋外における高速ネットワークのインフラとしてUQ WiMAXを評価しているニフティは、自分たちのモバイル接続サービスの選択肢としてモバイルWiMAXを加えた。現時点におけるニフティの認識はそれ以上でもそれ以下でもない。ユーザーにはニフティが用意する付加価値と価格とでモバイルWiMAXを提供する予定だが、その付加価値がUQ WiMAXの弱点をカバーしてくれることを、大いに期待したい。
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