“新しいiPad”を正しい色の液晶ディスプレイと見比べる:3世代のiPadを横並び比較(2)(2/2 ページ)
前回は初代iPad、iPad 2、新しいiPadの色再現性をプロ用の測色器で調べた。今回は実際の表示をsRGBの色がほぼ正確に出せる液晶ディスプレイと見比べてみよう。
レッド/グリーン/ブルー系の画像サンプル
・写真サンプル1(レッド系)
画面のほとんどを高彩度の赤が占めるサンプル。これまでの画像に比べて機種による差は小さいが、iPad 2だけ色がかなり違って見える。測色器でのテストでは赤の色域が初代iPadより少し狭かったせいか、オレンジっぽく、やや色あせた赤になった。初代iPadと新しいiPadは似た傾向だが、新しいiPadはより濃厚な赤が出ており、実物はFlexScan SX2462W-HXのsRGB表示に近い。
・写真サンプル2(グリーン系)
鮮やかな緑の葉を撮影したサンプル。グリーン系の色では、色域の違いがはっきり出ており、新しいiPadとFlexScan SX2462W-HXは、元データのみずみずしい緑や黄緑がきれいに再現できている。並べて見比べると、初代iPadとiPad 2は少々色あせた発色で、特にiPad 2はやや赤みがさしている。
・写真サンプル3(ブルー系)
空と海の青が目立つサンプル。空の青は微妙なトーン、海には青にエメラルドグリーンが混じり、再現の難しい元画像だが、色域がsRGBに近い新しいiPadとFlexScan SX2462W-HXはかなりよく再現できた。初代iPadは少し緑が、iPad 2は少し赤紫がかぶっているように見える
iPadの発色が黄色いと思うのは日本人だから?
そのほかにも3台のiPadにさまざまな画像を表示してみたが、表示傾向は同じだった。筆者が所有する3台のiPadを見る限り、やはり新しいiPadがsRGBの表示に最も近く、sRGBでキャリブレーションされた液晶ディスプレイと比較しても、違和感のないかなり自然な発色が得られている。測色器でのテスト結果が目視の評価で裏付けられた形だ。
初代iPadやiPad 2の色温度が高めの表示(白が青っぽい)に目が慣れていると、新しいiPadは黄色っぽい表示に感じるかもしれないが、普段からsRGBやAdobe RGB、写真印刷を想定した低い色温度(5000〜6500K)でディスプレイを使っている筆者にとっては、新しいiPadのほうがしっくり来ており、コンテンツを意図した色で映し出してくれる。
なお、CRTの時代から日本人は欧米に比べて色温度が高い表示を好む傾向にあるが、これは日本のアナログテレビ放送に採用された映像規格のNTSC-Jが9300Kを業界標準としていたことが大きい。また、欧米では室内照明に白熱灯が多いが、日本では蛍光灯が多いことも、色温度が高い白を好む傾向を後押ししてきた。
しかし、時代は変わりつつある。現在のデジタルハイビジョン放送では、世界標準の6500Kを色温度の基準としており、PCディスプレイも6500Kの色温度がスタンダードだ。当然、世界で販売されるディスプレイデバイスの色もこうした色温度に近いものが主流になる。多くの日本人の目もだんだん白が黄色っぽい低めの色温度に慣れてくるのではないだろうか。
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