“クラウド+ソリューション連携”で業務改革を加速――ソフトバンクの法人スマートデバイス戦略(2/2 ページ)
iPhoneやiPadの提案で、法人市場における存在感を大きなものにしたソフトバンクモバイル。他キャリアがAndroidでスマートデバイス市場に本腰を入れる中、どのような戦略で市場シェア拡大を目指すのか。法人担当のキーパーソンに聞いた。
これまでは一定の実績を持つ企業のみがパートナー企業の対象となっていたが、4月18日からは公募を開始。企業ニーズの高まりを受けて、より幅広い業種の案件に対応できるよう門戸を広げている。
SSP PREMIUMのパートナー認定企業には、さまざまな特典が用意される。1つは端末情報の開示だ。例えばAndroid端末の場合、Android OSより下のレイヤーには、メーカー独自の機能が実装されている。シャープなどの一部メーカーは自社でサポートサイトを作って仕様を公開しているが、海外メーカーはこうした対応をしていないケースもあるため、ソフトバンクモバイルが必要な技術情報を網羅した仕様の一覧を作成し、パートナー企業に提供する。
2つ目は実機の貸し出し。発売前の端末を早ければ3カ月前、だいたいは1カ月前に貸し出す体制をとっており、「新端末の発売と同時に、メジャーな法人サービスが対応している状態にする」(西澤氏)のが目標だ。
ほかにも、SSP PREMIUMパートナー企業の商材をクライアント企業がソフトバンクモバイルのオプションサービスのように購入し、アカウントを発行してすぐ使えるようにする「請求代行」の仕組みが用意されるなど、キャリアと協力して販路を広げることが可能になる。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| マーケティング支援 | サイトへの掲載、セミナー・展示会出展、キャンペーン等販促施策 |
| 開発支援 | スマートフォン端末仕様開示、スマートフォン端末仕様問い合わせ対応、スマートフォン端末検証機貸出、検証センター利用 |
| 共同営業 | ソフトバンクの営業担当への製品紹介、法人顧客向け製品紹介・同行営業 |
| 請求代行 | 請求代行 |
これまでの法人向けサービスは、キャリアが構築し、展開するケースが多かったが、導入企業の幅が広がり、ニーズが多様化する中ではパートナーとの協力が不可欠だと西澤氏。端末管理やセキュリティ周りは今後もキャリアが手がけるが、「お客さんが“武器としてスマートフォンを使う”ところのソリューションは、それぞれの分野で専門性の高いパートナーの力を借りてやっていく」という考えだ。また、顧客にとって利用価値の高いソリューションを増やしていくために、今後キャリアがすべき役割は2つあるという。
1つ目の役割は業務のフロントエンドであるデバイスとバックエンドである業務システムが連携できる環境づくりだ。これには社内に設置されている基幹システムとスマートデバイスをつなげるという手法もあれば、業務システムをクラウドに寄せていくという手法が考えられるという。この連携により、例えば「営業マンが電子カタログで商品をプレゼンし、クライアントが気に入った場合には、見積もりや在庫確認、発注システムと連携させて“その場で注文を受けられる”ことなどが実現する。“見せる”だけでなく“アクションを起こす”ところまで可能になっていく」(西澤氏)
もう1つの役割としてフロントエンドであるデバイスを業務に合わせてカスタマイズできる環境づくりを西澤氏は挙げる。これはスマートフォンと周辺機器を組み合わせることで業務専用端末として活用することを目指したものだ。例えばバーコードリーダー機能、ICカードリーダ機能、プリンタ機能を搭載したスマートフォン用のジャケットをスマートフォンに装着すると、モバイルPOSレジシステム、検針端末、棚卸し端末などのさまざまな業務専用端末として使うことが可能になる。数十万円する業務専用端末と比較すると激的なコストダウンにつながる見込みもあるという。
自らがショーケースに――スマートデバイスによるワークスタイルを自社でも実践
こうしたビジネス活用のポイントを実体験に基づくリアルな提案とするため、ソフトバンクグループの通信3社(ソフトバンクモバイル、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBB)は全社員にiPhoneとiPadを配布している。
法人向けにスマートフォンやタブレット端末を提案するソフトバンクテレコムでは、紙のカタログを減らし、インフォテリアの「Handbook」やホワイトクラウドのビジネス向けSNSサービス「クリアベイル」などのソリューションを活用し、iPad上で動画を再生しながらプレゼンテーションを行っている。
また、モバイルPCの代替として、ホワイトワークスタイルと呼ばれるホワイトクラウド デスクトップサービス(VPN接続や閉域網などのセキュアな環境下から、利用者ごとに割り当てられたクラウド上の仮想マシンにアクセスするサービス)を利用し、iPadをシンクライアントとして活用している。タブレット端末の普及がクラウド利用の促進につながることを、ソフトバンクは現場レベルで実証し、提案につなげているという。
Androidの登場で提案の幅が広がる
ソフトバンクモバイルのスマートフォンというとiPhoneやiPadのイメージが先行するが、Androidへの取り組みも精力的に行っている。2010年12月には「スマートフォン法人基本パック」としてAndroid端末向けに、ウイルス検知や遠隔ロック、端末紛失時の捜索、一斉メッセージ配信などの機能をパッケージ化したサービスの提供を開始した。
Androidが登場してからは、「法人向けのスマートフォンの提案の幅が広がった」と杉田氏。例えば、Androidをカスタマイズすることで、業務端末としてコストを最小限に抑えながら特定用途に特化した利用ができるという。「これまで業務端末は(モジュールを組み込んだ専用端末を使う)M2Mが中心だったが、Androidは専用端末に比べて目的に応じた機能を簡単に搭載でき、スピーディに導入できる。そのため、M2Mで見込んでいた需要をこちらで導入するという流れも出てきており、“業務デバイス活用の目線”で取り組むベンダーも目立ってきている」(杉田氏)
ただ、法人向けのAndroid導入には課題も残り、端末によってサポートするOSが異なる(端末によっては最新のOSへのアップデートができない端末もある)点や、暗号化を含めたセキュリティ対応が整備しきれていない点などが顕在化している。しかし今後は、最新版のOSへのアップデートや対応ソリューションの成熟により、これらの課題は解決に向かうだろう。
今年は、法人市場においてスマートフォンやタブレット端末が急速に普及すると予想される。スマートフォン/タブレット端末の法人市場において、iPhoneとiPadを武器に順調な滑り出しを見せたソフトバンクが、他キャリアも参戦するAndroidの法人市場でも存在感を示せるのか――。その動向に注目したい。
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