ユードーのノウハウを提供します――南雲氏が語る、iOSアプリの作り方と次の一手:ユードー創立10周年から学ぶiOSアプリ開発(3/3 ページ)
「ピアノマン」「斉藤さん」などのユニークなスマホアプリを世に送り続けているユードーが、11日に「ユードー創立10周年から学ぶiOSアプリ開発」と題したセミナーを開催。南雲玲生氏が、アプリ開発で心がけていること、失敗事例、大手に対抗するための秘策などを説明した。
話題を集めたけど失敗したアプリ
チリツモ戦略で着実に売上を伸ばしているユードーだが、経営の面からは、成功しなかったアプリもある。例えば「pompa」。手書きでチャットをしながらVoIPで電話もできるアプリで、2011年のApp Store アワードを獲得するなど話題を集めたが、いかんせん「管理が大変」(南雲氏)だった。「サーバコストもかかるし、不適切な投稿がないか、運営上の管理も大変。一生懸命作ってAppleからも評価され、僕たちは最高傑作だと思っていたけど、泣く泣くサービスを(一時的に)停止した」
手書きで描いたモンスターを使ってバトルができるゲーム「テガキモンスター」は、「今でも1日300人くらいが楽しんでいる」(南雲氏)そうだが、残念ながら「撃沈」だったそうだ。「ユードーは長期開発をして、作ったものを分析するのが苦手。売上の数字を見て、みんな暗くなっていた。ゲームはすごい面白いと思って楽しく作れたのに……。でもこういうモチベーションは大事にしたいと思っている。いつかリベンジしたい」と南雲氏は意気込む。
1週間で開発した「ホームラン侍」というアプリは、App Storeで総合2位を獲得するなど人気を集めたが、広告を入れていなかったのがネックになった。「作っていて楽しかったし、『面白い』と言っていただいたけど、ボランティアだったっけ? と(苦笑)。今後は広告を入れて、ほかのアプリへの導線を付けてからリリースしよう、ということで、今は引っ込めている」(南雲氏)
情報の拡散は“リアルな口コミ”がすごい
アプリ開発者の悩みの種の1つが、「作ったアプリをどうやって宣伝するか」ではないだろうか。「最近はリリースを出してもなかなか取り上げてくれない。Twitterなどのソーシャルメディアも拡散して瞬間的には(ダウンロード数が)伸びるけど、SNSは情報の減衰力が早く、一気に冷めてしまう」と南雲氏。同氏は、リアルな口コミ、それも高校生〜大学生の若い世代の拡散力が特に強いと考える。
「ある高校生が『このアプリ、超面白いんだよ』と言うと、友達がそのアプリをその場でインストールしているところを何度も見た。喫茶店でコーヒーを飲んでいていたら、就活中の大学生が、このピアノのゲーム(ピアノマン)が面白いんだよ、と友達に勧めてダウンロードしていた。思わず『僕が作っているんですよ』と声をかけちゃったのだけど(笑)」と南雲氏が話すように、リアルな口コミで伝達されることが、意外と多いようだ。また同氏は、高校生よりも下の世代にも注目している。「10代の情報伝達はものすごい。今の小学生はiモードを知らないけど、PlayStation Vitaもニンテンドー3DSもiPhoneも同列に見ている。その子たちがあと5年後にどうなるのか? この世代を狙って、そこから(ターゲットの年代を)上げていくのが良いと考えている」
口コミでアプリを勧めてもらうには「一言で伝わらないとダメ」と南雲氏。「このアプリの面白いところの1つ目は〜、2つ目は〜とか説明がいると、『もういいです』となってしまう。タイトルでそのアプリ全体が伝わると良いし、機能もシンプルに絞り込んだ方が良い」
アプリのデザインは、こじゃれたものだと埋もれてしまうので、「駄菓子屋」をイメージしている。「日本人に向けたタイトル、デザイン、世界観を取り入れた方がいい」というのが南雲氏の考えだ。
“音楽ビジネスを変える”新サービスを準備中
これはあらゆる仕事でいえることだが、現状に満足しないことも大切だ。「人は安定すると、そこに落ち着こうとする。それに対して不満を思わないといけない。もっと新しいことをやろうよと。成功したモデルに留まらず、次々とチャレンジをしていくことが重要」と南雲氏は説く。
そんなユードーが新たな一手として考えているのが、まもなくリリース予定の「Spot Music」という音楽アプリ。Spot Musicは、ユーザーがお金を払って音楽を聴くのではなく、ミュージシャンがお金を払ってリスナーに聴いてもらうのがユニークな点だ。ユーザーが音楽を聴くとポイントがたまり、良質のレビューを書くとさらにポイントがもらえる。ミュージシャンが広告出稿するようなイメージで、配信する楽曲はインディーズ系が中心になる。「某FM放送局さんと一緒にやっている」(南雲氏)そうで、規模の大きなプロジェクトになりそう。南雲氏は「音楽のビジネス、プラットフォームを変える」と意気込む。
「音楽に地域性を持たせたい」との考えから、日本全国のエリアスポットにミュージシャンが音楽を配置できる仕組みも用意する。音楽アプリを手がけてきたユードーらしく、「よく分からないけど、指先でいじると音が変わる」ような、イコライザーよりもさらに専門的に音をいじれる機能も提供する予定だ。
さらにもう1つ、長期で取り組んでいるタイトルがあるそうなので、期待したい。
Webアプリについても考えており、南雲氏は「ブラウザで動く面白い物をがんがんやっていく」と話していた。
個人クリエーターとノウハウを共有して“フランチャイズ化”を目指す
ユードーはアプリの個人クリエーターや起業家と積極的に協業していく姿勢を打ち出している。今回のイベントもアプリ開発者に向けたものであり、同社にとっては一緒にアプリを開発するパートナーを探すという目的もある。南雲氏も「今は一緒にアプリを作る人やクリエーター、学生さんを探していて、日本全国を回って動いている。ユードーは貧乏な会社なので、お金を出資するとか大きなことはできないけど、アプリ開発で成功した方法や技術を享受して、一緒に頑張って伸ばしていきたい」と話す。
個人のクリエーターには、資金、技術、人材など何かしら足りない要素がある。そこでユードーは「ベンチャーと合同でアプリやサービスを作るのがいいのではないか」と考える。ユードーは広告やVoIP、ポイント制など、これまでアプリ開発で培ってきたビジネスモデルのノウハウを持っている。このノウハウを、個人開発者に提供しながらユードーの“フランチャイズ化”を目指す。「せっかくユードーが一生懸命培ったノウハウを、自分たちのアプリだけに使うのはもったいない。もっとたくさんの人(開発者)に使ってもらいたい」(南雲氏)
ノウハウを共有するにはお金のやり取りが発生しうるが、「お金は最初はいらないので、アプリがうまくいったら何%くださいというやり方。あるいは、個人開発者の企画が面白い場合は、(ユードーが)半分出すので一緒に作りましょうよというやり方」を提案する。「僕たちが大手に勝つにはスピードが重要。半年前にヤフーは“爆速”と言っていた。爆速を超える単語を何と言ったら分からないけど、それほどこだわっているし、1時間でも速くという脅迫感さえある。いろいろな会社さんにノウハウ、企画、技術、少しお金も出して、爆速よりも速く一気にリリースするのが、僕らの今年のミッション」と南雲氏は締めくくった。
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