国内のBEMS市場拡大へ、認定アグリゲータ21社が決定補助金

総額300億円の補助金制度のもと、2012年度と13年度の2年間で6万棟以上のビルにBEMSを導入するプロジェクトが動き始める。この補助金の対象になるエネルギー管理サービスを提供できる「BEMSアグリゲータ」が21社に決まった。

» 2012年04月04日 22時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 IT・電気・電力関連の大手各社が総額300億円の補助金をめぐって水面下で動いてきた「BEMSアグリゲータ」の認定に関して、経済産業省が4月4日に審査結果を公表した。当初は10社程度が認定される予定だったが、成長市場のBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)に対する期待感が大きく、応募企業が想定以上に増えて59社にも上ったため、最終的に21社が選ばれることになった(図1)。

ALT 図1 「BEMSアグリゲータ」に認定された21社は、他社とコンソーシアムを組んでサービスを提供できる

 ITシステムインテグレータからはNTTデータをはじめ、日本IBM、日本ユニシス、富士通、三井情報の5社が認定を受けた。NEC(日本電気)は日本IBMのグループに入った。総合電機メーカーでは東芝と日立製作所が選出されたが、同じくBEMS分野に力を入れている三菱電機は21社の中に入っていない。このほか業務用エアコンで最大手のダイキン工業がBEMSアグリゲータに加わったことも注目される。

 21社のうちほぼ半数にあたる10社を占めるのが、電気・電力関連の設備設計・構築を主力業務とする会社である。大手ではNTTファシリティーズのほか、大阪を本社とするパナソニックESエンジニアリング、仙台に本社があるユアテック、九州電力グループの九電工も認定された。電気と熱の両方を作り出せるコージェネレーションシステムを武器にBEMS市場を開拓中の大手ガス会社は、単独では参加せず、東京ガスが日立製作所グループに、大阪ガスがNTTファシリティーズのグループに加わった。

サービス競争で料金低下の期待も

 BEMSの補助金制度は経済産業省の政策に基づいて、一般社団法人の「環境共創イニシアチブ」(略称SII)が運営主体になる。2012年度と13年度の2年間で、300億円の基金をもとに補助金を割り当てる予定だ。BEMSアグリゲータが決まったことで、補助金の申請受付は当初の予定通り4月中旬に始まる。

 実際にBEMSの補助金を受けられるのは、電力会社と「高圧小口」(契約電力50kW以上500kW未満)の契約を結んでいる中小規模のビルや工場に限られる。BEMSアグリゲータからエネルギー管理システムを導入することも必須条件である(図2)。ただし補助金の対象になる費用の中に、アグリゲータに支払うエネルギー管理システムのサービス利用料を含めることはできない。サービスを受けるために必要な装置の購入費や工事費が対象で、総額の2分の1か3分の1を補助金として受け取ることができる(詳細はSIIのウェブサイトを参照)。

ALT 図2 「BEMSアグリゲータ」によるエネルギー管理システムの主な構成要素

 BEMSアグリゲータ各社には、1000件以上の電力契約者に対してエネルギー管理サービスを提供することが求められている。当初は10社のアグリゲータで合計1万棟以上のビルにBEMSを導入することが目標とされていたが、アグリゲータに認定された21社の計画を合計すると6万5000件になるという。各社の計画どおりに導入が進んでいくと、2年間のうちに6万棟以上のビルでBEMSによる節電対策が実施できることになる。

 とはいえ日本全国で高圧小口の契約者数は約77万件あることから、6万5000件でも導入率は1割に満たない。今回の補助金によってBEMSの導入事例が増えていくことで、さらに導入企業が全国各地で広がる可能性があり、アグリゲータにとっては事業拡大の大きなチャンスになる。料金設定を含めたサービス競争が激しくなることも予想される。補助金の対象にならない大企業にとっても、BEMS関連の機器やサービスの導入コストが低下するという間接的なメリットを期待できそうだ。

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