基本料金の削減に続いて、もう一方の「電力量料金」を削減する方法を考えてみよう。
電力は夏のあいだ、特に午後の早い時間帯に最も多く使われる。いま懸念されている電力不足の問題を解消するためには、夏の昼間のピークを抑えなくてはならない。そこで各電力会社は、季節や時間帯によって電気料金の単価を変動させるメニューを打ち出している。単価に実際の使用量を掛け合わせて「電力量料金」が計算されるため、単価の安い時間帯に電力を使うようにすれば、電気代を引き下げる有効な手段になる。
東京電力の「高圧季節別時間帯別電力」という契約タイプを例にとると、年間を通じて昼間(8時〜22時)の料金単価が通常の契約よりも高くなる代わりに、夜間(22時〜8時)の単価は大幅に低くなる(図4)。さらに夏季(7月〜9月)はピークの時間帯(13時〜16時)の単価が高くなる設定だ。
実際に料金単価がどのくらい変動するのかを、東北電力がウェブサイトに掲載している料金表で具体的に見てみる。一般企業向けの通常の契約でも、夏季の料金単価は高く設定している(図5a)。東北電力は約9%を上乗せしており、ほかの電力会社も同程度である(北海道電力は夏季料金を設定していない)。
これに対して「季節別時間帯別」の契約では、4段階の料金単価が設定されている(図5b)。最も安い夜間の単価は、昼間のピーク時間の単価の半分以下になる。通常の契約で適用される単価(図5a)と比べても33〜38%も安い。ただし夜間以外の単価は通常契約よりも17〜27%高くなる。
このように季節や時間帯によって単価が変動する電力を活用するためには、電力使用量のピークを抑える「ピークカット」や、ピークを単価の安い時間帯にずらす「ピークシフト」の対策を講じる必要がある。エアコンの運転方法を工夫するなどの節電対策のほかに、電力使用量をきめ細かく管理して電気機器を自動制御するBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入する企業が最近は増えてきた。
単価の安い夜間の電力を蓄電池に貯めておいて、使用量が増える昼間に蓄電池から電力を供給する方法も有効である。太陽光などの自家発電設備によって、昼間の時間帯の電力を補給する取り組みも全国で広がりつつある。
自家発電設備と蓄電池を導入して、そのうえでBEMSを使って最適な電力使用状況を常に作り出すことができれば、ピークカットやピークシフトによる電気料金の削減額は大きくなる。各装置の導入コストと電気料金の削減額のバランスを見て、自社に合った設備を早めに導入することが望ましい。
本連載の次回以降では、ピーク電力をコントロールする装置や蓄電・発電機器の特徴を説明しながら、電力を安く使うためのさまざまな手法を取り上げていく。
連載(2):「節電を1台でこなす、デマンドコントローラ」
連載(3):「節電対策の主役に急浮上、BEMSの費用対効果を検証」
連載(4):「蓄電池に夜間の安い電力を、今なら補助金も使える」
連載(5):「昼間の電力ピークカットには太陽光発電、価格低下で普及が加速」
連載(6):「導入企業が増えるガスコージェネ、電気と熱の両方を効率よく供給」
連載(7):「電力会社を使わなければ、電気料金は下げられる」
連載(8):「電力は使い切らない、余らせて売ってコスト削減」
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