電力会社が前年度末までに政府に報告する需給計画の中で、今年度の需要見通しを「未定」としていた電力会社が数値の公表を開始した。中部電力は前年度比で3%増、九州電力は4%増と見込んでいる。ただし2010年度からは、それぞれ10%減と7%減になる。
夏の電力需給バランスがどうなるのか、西日本を中心に不安が収まらない中、一部の電力会社が遅ればせながら今年度の予測値を公表し始めた。中部電力が6月12日に、九州電力が6月19日に、今年度を含む10年間の需要見通し(販売電力量と最大電力)を明らかにした。ほかの電力会社も近く発表するものとみられる。
電力会社10社は毎年度末に、今後10年間の需給計画を経済産業大臣に届け出ることが義務付けられている。しかし今年度は節電効果の見極めに時間を要するという理由から、3月末時点では「未定」と報告した電力会社が多かった模様で、数値の検証を終えた電力会社が最新の需要見通しを公表し始めた。
電力の需給バランスにおいて重要な最大出力に関して、中部電力は今年度の見通しを前年度から約3%多い2493万kWと予測した(図1)。猛暑だった2010年度からは10%近い減少になる。年間の販売量は前年度と比べてもわずかに減少すると見込んでおり、企業や家庭における節電対策が進展していることをうかがわせる。来年度以降は需要が少しずつ伸びると予測しているが、やや楽観的な見通しと言えるだろう。
一方の九州電力は今年度の最大電力を前年度から約4%多い1559万kW、2010年度と比べると7%の減少になると見込んだ(図2)。同社は7月2日から9月7日の平日に2010年度比で10%以上の節電を企業や家庭に求めているが、今回発表した見通しはそれを下回っている。年間の販売量も前年度から約1%減ると予測している。
両社が発表した予測値は今夏の需給バランスを判断する材料になるだけではなく、電力会社の事業が先細りしていく可能性を示唆しているとみることもできそうだ。
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