北海道と並んで国内で最大規模の風力発電設備をもつ青森は、再生可能エネルギーの分野で最も先進的な県のひとつである。風力と並ぶ有望な分野として地熱にも力を入れており、地中の浅い層の熱を利用した冷暖房・給湯・融雪、さらには農業における取り組みを拡大中だ。
いかに青森県がエネルギーの活用に関して先進的であるかは、再生可能エネルギーの供給量(図1)と電力の消費量(図2)を見れば分かる。
電力の消費量は全国平均よりも少なくて、北海道と比べると3分の1以下である。対して再生可能エネルギーの供給量は北海道に匹敵する規模で、全国でも5番目に多い。エネルギーの自給率はトップクラスだ。
最大の要因は、早くからエネルギー分野を新しい産業として育成する方針を決め、さまざまな推進策を実施してきたことにある。6年前の2006年には「青森県風力発電導入推進アクションプラン」を策定して、風力発電の規模を2010年に30万kW、2015年に45万kWへ拡大する目標を設定した。
実際に2010年までに「野辺地ウインドファーム」(5万kW=50MW)など大型の風力発電所6か所が運転を開始して、目標の30万kWを突破した。現在は2015年度の稼働を目指して国内最大規模12万kW(120MW)の「ウィンドファームつがる」(仮称)の建設計画が進んでいる。
風力発電の拡大と並行して地熱に対する取り組みも4年前から開始している。2008年に「青森県地中熱利用推進ビジョン」を掲げて、地熱を利用した住宅や公共施設向けの冷暖房システムをはじめ、道路の融雪システム、農業では温室栽培向けの暖房システム(図3)の普及を推進してきた。
このビジョンでは、地熱の中でも地中の浅い部分にある低めの熱を利用することに重点を置いた。特に地下100メートルまでの地熱を利用したシステムが多く、熱の温度は50度以下である(図4)。発電用と違って冷暖房や融雪に使うには低温の熱でも十分で、導入コストが安く済む点が最大のメリットになる。
今後は地下1.5キロメートルまでにある温熱水の活用も進めていく方針で、「温泉発電」などにより電力を供給できるようにする。青森県が調査した結果では、利用できる可能性のあるエネルギーの中で地熱が最も大きいポテンシャルを持っている(図5、黄色〜オレンジ色の部分)。
地中の深い部分にある地熱を含めると、風力や太陽光の2倍以上のエネルギー量が期待でき、将来の開発余地は極めて大きい。風力に加えて地熱の利用を拡大することで、青森県のエネルギー供給力はますます高まっていく。
2013年版(2)青森:「風力発電で先頭を走り続ける、六ヶ所村に並ぶ大型の風車と蓄電池」
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